写真=足立雅史

日本代表にとって決定的な「プラスアルファ」になり得る存在

ジョージ・ワシントン大に所属する渡邊雄太。これまでも日本代表に招集されていたが、学業を優先することもあり、あくまで参加は限定的なもので、昨年のFIBAアジア選手権にも参加していない。だが今回は大学側とのスケジュールの折り合いが付き、本格参戦。日本代表に欠けていた「サイズがあるスモールフォワード」として大きな期待が寄せられている。

中国・蘇州で行われた『Atlas Challenge』で多くのプレータイムを与えられたことからも、その期待の大きさがうかがえる。昨日、晴れて12名のメンバー入りを果たした渡邊が、日本代表の一員として『世界への第一歩』を踏み出す意気込みを語ってくれた。

「最終メンバーに選んでいただいて、すごく光栄です。選んでいただいたからには日本の勝利のために全力でプレーして、何としてもリオへの出場権獲得を目指して頑張っていきたいです」

最終メンバーへの選出は「当確」と見られていたが、日本代表での実績、プロとしての実績に乏しい本人にとっては不安な気持ちも少なからずあった様子で、メンバー入りが伝えられた時の様子をこう話す。「上から年齢順に呼んでいったので、僕の名前が呼ばれたのは最後でした。正直、すごくドキドキしながら待っていました」

それでも、現在のチームに溶け込んでいる感覚は得ている。「まだ練習が足りてないので、もっと選手同士で合わせていかないといけない部分はあります。それでもコート内でもコート外でもチームの雰囲気は良いですし、そういった意味ではチームに溶け込めていると思います」

ただ、『Atlas Challenge』での自身のパフォーマンスには「はっきり言って0点という感じ」と全く満足していない。「あんなプレーでは、わざわざアメリカから帰ってきた意味はないです。課題ばかりなので、中国遠征の反省をしっかり生かして本番では日本の勝利に貢献できるようにしたい」

それでも収穫はあった。「僕が3番で出ている時はミスマッチができますし、逆にインサイドの4番で出た時も今度は大きい選手がついてくる分、クイックネスを生かしてプレーできていた時は通用していた。そういうところを生かしていきたい」

渡邊「早くやりたくてワクワクしています」

この日、メンバー発表会見後に行われた練習を川淵三郎会長が視察。選手たちに「奇跡を起こそう」と檄を飛ばした。渡邊はその言葉にあらためて刺激を受けながらも、「奇跡という言い方はあまりしたくない」と前置きしながら「120%の力を出さないと勝てないと思っています」と言う。「やっぱり世界最終予選で勝つことはそんなに簡単なことではないです。当然相手チームは100%でくるので、実力以上のものを出さないといけない」

奇跡を待つのはファンだけでいい。選手は自分たちが最高のパフォーマンスを発揮することで、その手で五輪行きの最後の切符を勝ち取ろうとしている、という気持ちなのだろう。ただ、この厳しい戦いを目前に控えた渡邊の今の気持ちは「楽しみの一言です」とのこと。

「大学のシーズンが3月の終わりに終わってから、しばらく実戦から遠ざかっているので、早くやりたくてワクワクしています。代表の一員として世界最終予選という素晴らしい舞台に立てることがすごく良い経験になると思います。さっきも言ったように、とにかく勝ちにこだわってリオの出場権獲得できるように頑張りたいです」

日本代表がチームとして120%のパフォーマンスを発揮する──。そのためには、昨年のFIBAアジア選手権にはいなかった新戦力、渡邊雄太の活躍が不可欠だ。彼の力は日本代表にとって決定的な「プラスアルファ」になり得る。21歳の若きバスケットマンの活躍に期待したい。

世界最終予選を目前に控えたチームを激励した川淵三郎会長。