文・写真=鈴木栄一

ヘルプに行かない1対1で身体を張った守備を披露

12月9日、川崎ブレイブサンダースはホームでのシーホース三河戦に89-58で勝利。現在リーグ最高勝率を圧倒したことで、連敗を3でストップさせた。この試合、ゴール下の守備で奮闘したのがパワーフォワードの鎌田裕也だ。

鎌田は自分よりもひと回り以上大きな三河の巨漢、アイザック・バッツ相手にフィジカルなディフェンスを披露。川崎がオン・ザ・コート「1」の時間帯となる第2クォーター、第3クォーターにおいて4番ポジションを担い、第2クォーターで10失点、第3クォーターで15失点と相手をしっかり抑えることに貢献した。

特に今回の試合、オン・ザ・コートの数は川崎の「2-1-1-2」に対し三河は「1-2-1-2」で、川崎は第2クォーターでは外国籍選手の数で不利となる。それだけに第1クォーターで22-12と先行した後、第2クォーターで18-10とさらに突き放し、前半で18点の大量リードを奪ったことが勝敗を分けるポイントとなった。

川崎の北卓也ヘッドコーチは、99-104で敗れた8日の試合ではバッツと鎌田のマッチアップにおいて、ダブルチームなど自分たちから積極的に仕掛けに行ったところをうまく読まれてパスをさばかれ、そこからイージーシュートを打たれてしまったと分析。だからこそこの日は「ヘルプにあまり行かずマンツーマンでやろうと決めました」と基本的には鎌田に対応を任せた。

その結果として失点数を抑えることに成功。「昨日今日と身体を張ってディフェンスしてくれました。昨日も良かったですが、昨日に増して今日は身体を張っていた。本当に良い活躍をしてくれたと思います」と指揮官は鎌田を称えている。

磨々道と永吉が抜けたポジションを埋める存在に

その鎌田は自身のパフォーマンスをこう振り返る。「自分の役割であるディフェンスからチームに流れをもってこられたのは良かったと思います。相手はパワーが強く、高さがあるのでゴールになるべく近づけさせない。少しでも上でボールを持たせる。そうしたらみんながヘルプにも来やすくなりますし、そういうことを意識しました」

昨シーズン終了後の川崎では、帰化枠で大きな存在感を発揮していたジュフ磨々道が引退。さらに永吉佑也が京都ハンナリーズに移籍して、オン「1」の時間帯における4番ポジションを担っていた選手が揃ってチームを去った。鎌田は彼らの穴を埋める存在として出番を増やしている。

今回の三河戦に限らず外国籍ビッグマンとのマッチアップが多い鎌田は「正直、1対1で勝てるとは思っていないです。チームで守ることです」と語る。ただ、一方で「マドゥ(ジュフ磨々道)はリバウンドをとても取ってくれていた選手で、そういう部分でプレッシャーになります。でも、彼が抜けたから戦力ダウンと言われるのは絶対に嫌です」と秘めたる闘志をしっかりと持っている。

「自分の役割はまずディフェンス、リバウンド」

一見すると身体能力任せの武骨なプレースタイルに見えなくもない鎌田だが、「マッチアップする相手について毎試合、相手の得意、苦手な部分を研究して、相手の嫌がることをどんどんやり続けていくこと。みんなタイプは違うので、それにアジャスストしないといけないです」と、実際は綿密なスカウティングをして試合に臨む頭脳派パワーフォワードだ。

また、控えめで謙虚な語り口の彼ではあるが、「これだけ外国籍選手とやっているので、そういう部分では自信になっています」と、積み重ねてきた経験から確固たる手応えを得ている。さらにこれからは「自分の役割はまずディフェンス、リバウンドを徹底してやり続けること。ただ、軸をしっかりやりながら、外からシュートを打つなどプレーの幅を広げてオフェンス面でもみんなを楽にさせてあげたいです」と、よりチームの助けとなるためにレベルアップを目指す。

シーズン開幕前、川崎の懸念材料と見られていた日本人パワーフォワードのポジション。しかし、鎌田の台頭はその心配を杞憂にさせつつある。これから彼がどこまで試合に与えるインパクトを大きくしていけるのかは、川崎の巻き返しにおける重要な鍵となってくるかもしれない。