ともに20点オーバーのスコアラー対決
昨日行われた川崎ブレイブサンダースとシーホース三河の第1戦は、104-99で三河が勝利した。フィールドゴールの成功率がともに60%を超えるハイレベルな点の取り合いの中心にいたのは、洛南から青山学院大と続く先輩と後輩、辻直人と比江島慎だった。
1年先輩の辻は6本の3ポイントシュートを含むゲームハイの26得点を挙げ、川崎の追撃を主導した。11点のリードを許した第3クォーター終盤には3連続3ポイントシュートで流れを引き戻し、また最終クォーターの終盤には3ポイントシュートを警戒する相手に対し、ピック&ロールからジョシュ・デービスの逆転ゴールを演出するなど7アシストも記録している。
「今日の試合は今まで練習してきたピック&ロールからのスリーもそうですし、アシストもそうですし、今シーズンに入って一番良くできたという実感はあります」と辻。
後輩の比江島もシーズンハイ(タイ)となる23得点を記録。そのうち15得点を最終クォーターに固めるなど、勝負強さが光った。「(アイザック)バッツのミスマッチだったり、(桜木)ジェイアールのところをつきながら、今日はアシストに回ろうという意識もあったので、得点を取る意識はそこまでなかったです」
結果的に23得点を積み上げたが「僕もそんなに取っているとさっき気付きました」と語る。
辻「ドライブを一番警戒していました」
三河に勝利をもたらしたのは、ラスト1.6秒で決めた比江島の3ポイントシュートだった。残り15秒、ボールを託された比江島とマークにつく辻の1on1。その時の2人の駆け引きが面白い。
比江島は言う。「シュートタッチは良かったので中にいってミスをするより打ち切ろうと思っていました。ファールがかさんでいたんですけど(川崎はすでにチームファウルが5に到達)、ファウルをもらうというよりかは自分のシュートタッチを信じて、思い切り打ちました。スリーを打つと決めてました」
一方の辻はこう説明する。「アイソレーションになって、1対1になって比江島の得意なドライブを一番警戒していました。同点だったので打ってきたとは思うんですけど、それ(ドライブ)を守ろうと思いました」
同点で相手チームファウルが5に達していた場合、オフェンス側はフリースローを獲得できる可能性も考えドライブを選択するケースが一般的だ。辻もそれが頭にあったため、やや引き気味にディフェンスをした。
だが比江島は全く逆の考えを持っていたため、あのシュートが生まれていたのだ。「1点負けだったら違うシュートかもしれなかったですね」と辻が指摘するように、外れても同点という状況が比江島に大胆な選択を可能にした。
比江島「辻さんは怖いのであまりやりたくない」
コート内では激しいマッチアップを繰り広げたが、一歩コートの外に出れば、仲の良い先輩と後輩の関係に戻る。そして2人はお互いを認め合っている。
比江島は「良い時の辻さんだったと思います」と先輩を称えた。「少しでも空いたら打つ、ゴールに向かう意識というか、今日は自分が点を取りに行く意識があったと思います。あまり偉そうなこと言えないですけど」
「常にボールをもらいにいってましたし、休む暇がなかったのでキツかったです。ディフェンスをもうちょっとやらないといけないと思ってたんですけど、めちゃくちゃやられました」とディフェンス面を反省した。また「辻さんは試合中に人が変わるので、怖いのであまりやりたくないです」とコメントし、取り囲む記者たちの笑いを誘った。
このやりとりを聞いた辻は「いらんこと言うなあ」と表情を崩した。「やっぱり『さすが』の一言につきます。技術の面はもちろんですけど、ああやって勝負どころで決めるのも流石です」
試合には敗れたが後輩との真剣勝負を終え、「マッチアップの面ではやってて楽しかった」と正直な思いを口にした。
今日の第2戦、比江島は「あまりやりたくない」とは言っても2人がマッチアップする機会は何度も訪れるだろう。特に競った展開で終盤までもつれれば、昨日と同じくエース同士のマッチアップが勝敗を左右する状況となる。代表戦からシュートタッチの良さが際立つ比江島か、あるいは辻が先輩の意地を見せるか。引き続き2人の熱い戦いに注目したい。