レブロン・ジェームズ

レイカーズ関係者の人生を変えた2時間半のフライト

1月26日、レイカーズの選手、スタッフ、関係者たちは、ヒューストン、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィアでの遠征を終え、ロサンゼルスに戻るチャーター機に搭乗した。それからほどなくして、コービー・ブライアントがヘリコプターの墜落事故で亡くなったことを知った。

この時に機内で起こった出来事を『ESPN』が伝えた。

ヘッドコーチのフランク・ボーゲルは、前日に91-108で敗れたセブンティシクサーズ戦の映像を繰り返し見直し、改善点を洗い出そうとしていた。球団広報から、「携帯電話でコービーの事故死を伝える速報を見た」と伝えられたボーゲルは、最初は誤報と思い込み、取り合わなかったという。

広報スタッフがロサンゼルスの球団職員に情報を集めるように指示して確認したところ、誤報ではなく、本当にコービーが他界したことが確認された。ボーゲルは「チームのコーチ、リーダーとして、選手たちにすぐに伝えないといけないと思った」と、振り返っている。

多くの選手が疲労により眠っていた中、飛行機では眠れないアンソニー・デイビスは、タブレット端末で映画を見ていた。ふと画面から視線を外すと、ドワイト・ハワードとデマーカス・カズンズが手招きしていることに気づいた。そしてヘッドフォンを外すと、ハワードから「コービーが死んだ」と伝えられた。

デイビスは、コービーの死を知った瞬間のやり取りを、こう説明する。

「コービーは無敵の存在と思っていたから、『どこのコービーが亡くなったの?』という返しをした。まさか、コービー・ブライアントのことだとは思わなかったから。何度か同じやり取りをして、コービー・ブライアントが亡くなったことを認識できた。その時、ブロン(レブロン・ジェームズ)は寝ていた。僕は詳細を知りたかったからドワイトに、『どうして? 原因は? 何故?』と畳み掛けて聞いた。彼は、『ヘリコプターが墜落した』と言っていた」

「それを知って、すぐにブロンの身体を強く揺すって起こした。目が覚めたブロンは、『冗談もいい加減にしろよ』という感じだった。僕はネットで情報を確認しようとした。ドワイトは泣き出して、『本当のことなんだ』と言っていた」

ハワードは、機内の狭いトイレに向かい、そこで咽び泣いた。

ボーゲルが選手たちのもとに向かった時には、すでに全員がコービーが事故死したことを知っていた。それでも指揮官は、選手一人ひとりと話し、コービーの死を伝えた。

前日のシクサーズ戦で、コービーの通算得点を抜いたばかりのレブロンは、事故が起こった日の朝、コービーから祝福の電話をもらっていた。全員が涙を流してコービーの死を悼んだ中、レブロンは選手を集めて祈りを捧げたという。

「咄嗟に行動していた」と、レブロンは話す。「みんなで、天国に行った彼に感謝の気持ちを表すことが必要だと思ったんだ」

フィラデルフィアからロサンゼルスまでの所要時間は、およそ2時間半。それだけの時間だったにもかかわらず、機内のレイカーズ関係者全員にとって、飛行機に乗り込む前後で世界が一変した。

たった2時間半の移動は、機内の全員にとって、人生で最も長く感じたフライトだった。