今年、インターハイに続きウインターカップにも出場する大阪学院。チームを率いる髙橋渉監督は子供たちの自主性を引き出すことで、選手として、そして人間としての成長をうながしている。ウインターカップに臨む選手たちに「人生の1ページを作ってほしい」と話す髙橋監督に、大会への意気込みを聞いた。
[INDEX]ウインターカップ2017プレビュー 出場校インタビュー
「3年間かけてきちんと自信をもたせてあげる」
──今のチームで一番苦労した選手、一番変わった選手は誰ですか?
試合に出ていて一番変わったのは田中透希、2年生のセンターですね。今193cmくらいあるんですが神経質で、自分に自信がないことを人に悟られたくない。だから虚勢を張るんですが、繊細なんです。最初に来た頃は笑っている顔をほとんど見たことがありませんでした。でも今は気持ちにゆとりができて、いろんなやつと会話して笑って、先生と話す時も目を見て受け答えできています。もともと真面目なんですが、キレてしまうのも早かった。「できるようになるから、焦らんとゆっくりやれ」という言葉だけはかけました。
一番成長したのはキャプテンの髙田知毅ですね。キャプテンは選手たちに決めさせるんですが、私は最初から髙田だと思っていたんです。でも彼らが出してきたのは別の選手でした。髙田は自分でやらなあかんのは分かってるけど、自信がなかったり面倒くさかったり。あるきっかけで新人戦の前にキャプテンを髙田に変えたのですが、チームをまとめるにはほど遠い感じで、彼自身が自分の苦手なところに向き合えなかったんです。私が要求することに対しても、戸惑い、反抗していました。そうしないといけないことにようやく気付いて、変わってきました。
ウインターカップの決勝で、私がテクニカルファウルを取られたんです。「リバウンドファウルちゃうの?」とベンチから見ていて言ったら、振り向きざまにピッと。その時にまだ7点か8点負けていたと思うのですが、チームがざわつきました。その時に髙田がメンバーを集めて「落ち着け」と。それぐらい冷静に状況判断をして、選手たちに声をかけていました。
──指導者として高校生の選手を育てる醍醐味を感じるのはどういう時ですか?
例えば今回の3年生の代だと、ジュニアオールスターで優勝した選手たちが他県へ出ました。今のウチの主力にジュニアオールスターに出ていた子はほとんどいません。でも、高校3年の今は大阪の代表選手としてウインターカップに行くんですよ。髙田は京都のジュニアオールスターに出ていましたが、あとの4人は誰も入っていないです。そういう子たちを3年間かけてきちんと自信をもたせてあげれば、これだけできるんだと。「こいつ誰や!?」って驚かれる選手になれます。そこが私にとっては醍醐味というか、腕の見せどころですね。
──全国レベルの選手たちではあっても、普通の高校生っぽいところもありますか?
みんな結構仲が良いです。どうでもええ話ばかりしてたって意味がないから、必要な会話をしろと私は言うんですが、まあ楽しくワイワイやるのがチームのカラーではありますね。上下関係も厳しくなくて、学年に関係なく仲良くやっています。1年生が先輩に「何々く~ん」と呼び掛けたり、3年と1年がじゃれていることもありますし。まあよくしゃべりますね(笑)。
「私自身もワクワクしています。まずは1勝ですね」
──ウインターカップに対する思いと、今大会の目標を教えてください。
高校3年間の集大成で、今まで努力して培ってきたことを出す最後の試合ですから、みんなそれぞれ意味があります。これは試合に出ている出ていない関係なしに。だから今回は3年生全員を連れていきます。自分の人生の1ページを、その一瞬をちゃんと作ってほしい。人はそれぞれ違うけれど、そこへの思いはチームで一つにして。勝つに越したことはないですが、優勝しない限りはどこかで負けるので、悔いのない応援、悔いのない試合をしたいです。会場への入り、コートでの歩き方、ウォーミングアップからすべて全力で。
選手たちにはいつも言っています。「あの体育館で試合をしていると想像しているか?」と。自分たちがユニフォームを着て東京体育館でプレーしていることを想像して練習しているか。それができなかったら、12月24日は絶対に良い試合ができないよと。
──ポイントになるのはどの部分でしょう。
チームのバランスは取れてきています。4番と5番が下級生なんですが、この2人がすごく伸びてきているので注目してもらいたいです。そしてチームとしての売りはやっぱり3年生のアウトサイドなので、そこで良いミドル、良い3ポイントシュートを打ちたいですね。
今回は初戦が市立船橋で、先生も生徒もよく知っています。キャプテンの保泉遼は日中韓で僕が連れていって教えている選手です。めちゃくちゃ良いやつなんですよ。本当に真面目で献身的にチームを支えてくれる子なんで。そういうチームとまた対戦できることは、私自身もワクワクしています。まずは1勝ですね。何とか40分間粘って、1点上回っていたらと(笑)。