文・写真=丸山素行 

『悪ガキ』をまとめて手にした栄光

昨日行われた男子インカレ決勝戦、大東文化大学は筑波大学を破り初優勝を成し遂げた。

勝因となったのは前線からプレッシャーを与え続けたディフェンスとオフェンスリバウンドだった。モッチ・ラミンに次ぐ5つのオフェンスリバウンドをもぎ取り、要所で得点を奪ったのはキャプテンの葛原大智。その働きは最優秀選手賞にふさわしいものだった。

4連覇のかかる筑波大と初優勝を狙う大東大という構図となった決勝戦。4年生にとっては最後の大会でありプレッシャーは誰しも感じるはずだった。それでも葛原は「プレッシャーを感じていなかった」ときっぱりと言い切った。

「自分たちは初優勝というプレッシャーを感じてなかったですし、こういう形で終われて良かったです。自分たちはそういうキャラじゃないので、大東といえばノリと勢いなんで。悪ガキがいっぱいいて、そういった集団なので感じることはなかったです」

あの大舞台で普段通りのパフォーマンスができたのは『悪ガキ』ならではの強いハートがあったからこそ。その強い気持ちは大東大がもっとも強調していた部分だ。西尾吉弘監督を始め、選手全員が「気持ちで負けない」ことを念頭に置いていた。筑波大にトドメを刺す終盤のビッグランも、その強気の姿勢が生み出したものだ。

それでも、気持ちの強い選手が集まるチームをキャプテンとして束ねるのは簡単ではなかったはずだ。葛原は言う。「みんな我が強いので、まずは一人ひとり話を聞いてどうしていくかとコミュニケーションを取りました。キャラが濃いので、スタートで集まってミーティングして一つのベクトルに向かって頑張った結果がこうなったと思います」

4対1の大濠出身バトルに勝利

葛原はバスケ名門の福岡大学附属大濠の出身。筑波大の先発5人のうち青木保憲、杉浦佑成、増田啓介、牧隼利の実に4人が大濠出身、元チームメートとの戦いとなった。特に同学年の杉浦は決勝の前日、「同級生の葛原に負けるのはムカつくので、負けるわけにはいかない」と意識していた。

葛原も少なからず意識はしていたが、そこに慣れ合いはなかった。「チームメートからも『ここで勝ったら本物だよ』と言われていました。 結果、大濠が4対1でしたが、別に4人いようが関係ないだろって感じです。そこは大学に来たら関係ないですし、気持ちを出した者の勝ち、チームでまとまった者の勝ちなので、そういったところが上回れたんだと思います」

だが青木のキャプテンシーを高校で見てきたことは、初めてキャプテンを任される上で参考になったという。「ヤスはメンタル面からプレー面からすべて支えるすごいキャプテンですし、それを高校で見てきたというのはあります。それを学ぶというわけじゃないですけど、自分は自分の色を出すっていう感じでやりました」

大東大で身に着いた「鼓舞力」

プレーヤーとしては強気な姿勢を貫き、キャプテンとしてチームを鼓舞し続けた葛原。取材を受ける際は落ち着いており、コート上の姿とはギャップがある。「そんな強気じゃないですね。コート外ではナヨナヨしてます。学校の友達が来てくれたんですけど、バスケしてる時と全然性格違うじゃん、と言われました」と照れ笑いする。

葛原は普段の自分の性格を変えてまでキャプテンとしての役割を果たし、大学最後の大会を最高の結果で終えた。「高校の時はヤスと佑成におんぶにだっこという状態が続きました。自分でも何を得たのかなということもあったんですけど」と謙遜しながらも、「大学で試合に出る機会も増えましたし、キャプテンも任せてもらって、チームの先頭に立つことで『鼓舞力』を身に着けられたのかなと思います」と自身の成長を噛み締めた。

かつての仲間の前でステップアップした姿を披露し、初優勝をもたらした葛原。「大東大に来て良かった」と満面に笑みを浮かべた。