女子日本代表

オリンピック出場へ向け、ベルギーが見せた執念

ベルギーのオステンドで行われているオリンピック予選、バスケットボール女子日本代表はその第2戦でホスト国のベルギーと対戦した。

日本の先発は本橋菜子、赤穂ひまわり、馬瓜エブリン、長岡萌映子、渡嘉敷来夢。初戦では立ち上がりが重い課題があったが、この試合では本橋のボールプッシュからリズムを作り出し、長岡や渡嘉敷が果敢にシュートを狙う。ベルギーも高さを生かした力強い攻めを見せ、タフショットも沈めたことで序盤は点の取り合いに。日本は開始6分で本橋から吉田亜沙美へとポイントガードが交代。これでトランジションがさらにスピードを増し、林咲希の3ポイントシュート、長岡のバスケット・カウント、大﨑の3ポイントシュートと波に乗って、22-13とリードして第1クォーターを終えた。

しかし、第2クォーターに入るとベルギーの3ポイントシュート攻勢を浴びる。素早いパス回しからワイドオープンを作り、力強いドライブからも外へと展開する猛攻で逆転を許す。その後は3ポイントシュートは打たせない対策を取ったものの、今度はピック&ロールからの攻めを止められない。WNBAファイナルMVPの実績を持つ192cmのエマ・メッセマンのマークは渡嘉敷が担当していたが、スイッチされてインサイドで高さのミスマッチを突かれての失点が続いた。

34-40で迎えた後半、立ち上がりから日本はミスが続き、ベルギーはメッセマンのゴール下、キム・メスタフの3ポイントシュートと思い切りの良いアタックで突き放される。ビハインドが15点まで開いた状況、吉田と本橋の2ガードで流れを変えようとするが、ここでインサイドの柱である渡嘉敷がファウルトラブルでベンチに下がり、反撃に勢いが出なかった。

長身のインサイドプレーヤーも3ポイントシュートを狙う、ピック&ロールから選手とボールが素早く連動してズレを作り出す。こういった日本のやりたいバスケットを遂行したのはベルギーだった。日本のシュートタッチも悪くはなかったが、ディフェンスでベルギーを止められず、主導権を奪うことができない。

女子日本代表

シューター林咲希が爆発、驚異の追い上げ

第3クォーターを終えた時点で53-68と15点差。ベルギーの3ポイントシュート攻勢が目立ったが、実際は相手が19本中9本成功、日本は21本中8本成功と、ここで大きな差はついていない。しかし2点シュートではベルギーの30本中20本成功に対して日本は21本中10本成功と、確率でもシュート試投数でも大きな差がついた。ベルギーはここまで23アシストを記録(日本は15)。ピック&ロールでズレを作り、ゴール下に飛び込む選手に上手くパスを合わせて確率の高いシュートチャンスを数多く作り出したことがベルギーの大量リードを生み出した。

しかし日本代表もあきらめない。町田瑠唯と本橋の2ガードでテンポをさらに上げるとともに、大量ビハインドからの逆転を狙い3ポイントシュート攻勢に賭ける。ここで追い上げの中心を担ったのは林だ。速攻からあえて3ポイントラインの外に戻るステップバックスリー、続いてセカンドチャンスからロング3ポイントシュートをねじ込み、残り2分14分で79-85と6点差まで追い上げる。猛追を浴びて浮足立つベルギーに対し、日本のオールコートプレスでライブターンオーバーを誘い、トランジションから林が8本目の3ポイントシュートを沈め、町田が速攻からレイアップを決めて84-85と1点差に迫った。

ベルギーは終盤にスタミナ切れを起こしていたが、負ければオリンピック行きの可能性がほぼ消える状況とあって気力で踏ん張った。本橋のプルアップをブロックショットで叩き落し、ヘッセマンが渡嘉敷の粘り強いディフェンスをかわしてゴール下を決め、ファウルゲームのフリースローを落としてもリバウンドを取って日本にポゼッションを渡さない。こうして終盤に苦しみながらも屈しなかったベルギーが、92-84で勝利した。

女子日本代表

下を向かない町田瑠唯「自分たちのリズムで」

日本にとってはディフェンスの課題が出る試合となったが、大量ビハインドを背負ってもチームとして崩れることなく、スモールバスケットで強烈な追い上げができたことは収穫だった。ヘッドコーチのトム・ホーバスは悔しい表情を見せながらも「こういう経験も必要。最後まで頑張ったからヘッドダウンしない。ディフェンスの弱いところは直さないといけないが、みんな気持ちの強さは出せたと思います」とポジティブな面を強調した。

指揮官ホーバスは「ディフェンスなら吉田だけど、オフェンスでは町田」と、逆転を狙う最終クォーターを町田に託した判断を説明する。第3クォーターまでは出番がなかった町田は、期待通りポイントガードとして終盤の追い上げを主導した。

「あと10分しかなくて点差もあって、出ている選手は3ポイントシュートを打てる選手ばかりだったので、私はとにかくプッシュして、ドライブでペイントアタックしてキックアウトすることを徹底しました」と、町田は自身のプレーを振り返る。「みんなが決めてくれたので結果にはなったのですが、1点差までは行ったんですけど逆転できなかったのは悔いが残ります」

しかし、敗戦を喫しても下は向いていない。「自分がどのタイミングで出るか、何分出るかは分かりませんが、やることをしっかり意識したい」と町田は語るとともに、「ランキングは上なんですけど、自分たちのリズムでやれば勝てると思っています。準備をしっかりしてやっていきたい」と、今日深夜に行われる予選最終戦のカナダ戦に意識を切り替えた。

開催国枠での東京オリンピックがすでに決まっている日本にとっては、勝敗よりも内容が大事。それでも町田が語るように勝敗にこだわってベストを尽くすことで、チームはよりタフになっていくはずだ。