文・写真=鈴木栄一

ミスが出て突き放せない接戦、何とか競り勝つ

11月18日、琉球ゴールデンキングスが本拠地で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対決。ともにオフェンスでリズムに乗り切れないロースコアの展開となる中、要所で踏ん張った琉球が67-64で競り勝った。

第1クォーターは互角の展開となるが、名古屋Dは張本天傑や笹山貴哉の奮闘で2点をリードする。しかし、第2クォーターに入ると、琉球は田代直希のレイアップ、津山尚大の3ポイントによる連続得点ですぐに勝ち越し。その後、藤永佳昭の働きで名古屋Dもが盛り返すが、ここで津山尚大がチームを引っ張る。

3ポイントシュートでファウルをもらって3本のフリースローを得た津山だが、このすべてを失敗。それでもこれで消極的になるのではなく、逆にここから攻め続けて3ポイントシュートを3本連続で成功。結局、このクォーターで計12得点を挙げた津山の活躍により、琉球は33-30とリードして試合を折り返す。

第3クォーター、琉球は須田侑太郎の連続得点でリードを広げ、田代直希の連続3ポイントシュート成功で主導権を握り続け、8点リードでこのクォーターを終える。第4クォーター、このまま流れによって突き放したい琉球だったが、このクォーターで計6つのターンオーバーが示すようミスに付け込まれ、残り4分40秒で1点差にまで詰め寄られてオフィシャルタイムアウトに。

琉球はこの悪い流れの中、タイムアウト明けに古川孝敏がシュートを決めると、さらにヒルトン・アームストロングが連続得点で再びリードを7点にまで広げる。その後、名古屋Dも本日17点を挙げた笹山の3ポイントシュートなどで肉薄するが、琉球は残り10秒で迎えた最後の守りで、名古屋Dに満足な形でシュートを打たせずに逃げ切った。

「勝ったことが良い薬になる試合ではなかった」

琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、「ディフェンスで我慢できているのは今年の良さではありますが、そこからターンオーバーをし、ゴール下のシュートをぽろぽろと外す。ファウルをもらっているけどフリースローを決められないと、バスケットボールでいう負けるパターンだったと思います。ただ、そこでこらえて勝てたのは良かった」とコメント。

さらに「選手にロッカールームで言いましたが、勝ったことが良い薬になる試合ではなかったです。勝ちましたが、ポイントとなる場面でオフェンスリバウンドを取られたことや、ターンオーバーについて、厳しめに言いました。勝ったからこそ厳しく言える。やることをやらないといけない点で、反省しないといけないです」と続け、勝ったものの内容的には大いに反省ありと振り返っている。

この試合の終盤、最も重要な場面において琉球は津山、古川、田代とこれまでにないトリオでバックコートを構成。特に津山は、佐々ヘッドコーチが「普段の練習でもほとんどしていない」と言うポイントガードを務めた。指揮官は、「バスケットボールはメンタルゲームだと思っています。その中で(11月4日、5日の)北海道戦の1試合目の後、彼には結構キツく言って、2試合目にはほとんど使いませんでした。それで今日フリースローを3連続で外した後、3ポイントを3連続で決めたのは大きいことです。そういった意味でも、最後を任せられました」と、メンタルの強さを評価しての起用だったと語る。

14得点4アシストを記録した津山は、「北海道戦の次から気持ちを入れ替えて練習に取り組み、そこから西宮戦で少しずつリズムをつかめてきました。今日は最後にポイントガードをやらせてもらえましたが、自分の仕事を最後まで丁寧にすることを意識しながらプレーしました」と振り返る。

津山と田代、不調を乗り越えて成長する選手たち

また、10得点に加え、ここ一番でのリバウンドなど身体を張った守備が光った田代について、佐々ヘッドコーチは「田代は吹っ切れて自分の役割を自分で決めた感じです。ずっとリバウンドとディフェンスを頑張ってくれています。泥臭くやってほしいと言っていますが、ディフェンスを頑張り、オフェンスではオープンショットを打ち、ドライブを仕掛けていく。見ていて分かりやすいので、使いやすいです」と見ている。

さらに指揮官は「田代に古川もシュートが入らないとかミスがありました。しかし、泥臭いプレーを見せてくれるのは良いことです。チャンピオンチームになるには、チーム全員がそうならないといけない」と、ともに持ち味である長距離砲が不発に終わっても献身的なプレーでチームを救った点を高く評価した。

北海道戦で一度は評価を落とすが、そこからすぐに復活した津山。そしてアーリーカップでは先発を任された田代も、そこから調子が上がらず一時はほとんど出場時間のない苦しい時期が続いていたが、10月29日の千葉ジェッツ戦から、日本人フォワードで幅のあるサイズを生かした守備に活路を見いだし、プレータイムを増やしている。

60試合という長丁場のレギュラーシーズンはチームだけでなく、各選手にとっても浮き沈みがあるもの。だからこそ「試合に出ない期間、調子が落ちた時があっても、そこから頑張れば上がっていけます。そういったところはチームの良さになっています」と佐々ヘッドコーチが語るように、悪い時期があってもそこを乗り越える選手が出ることは、チーム力の底上げへとつながっていく。

故障から復帰した古川はもちろん、津山、田代と調子の波が沈んでいた選手が立ち直って勝利を導く働きをしてくれたことは、琉球にとって大きな意味を持つ試合だったと言えるだろう。