細谷将司

「後半にエナジーをもう一段階上げることができれば」

秋田ノーザンハピネッツは1月15日の水曜ナイトゲームで千葉ジェッツに75-96で敗れ、年をまたいで7連敗となった。

激しい守りを持ち味とする秋田は序盤から積極的なディフェンスを仕掛け、ターンオーバーから6点を奪って互角の戦いを見せる。千葉の3ポイントシュートが当たったことでビハインドを背負うも、激しい守備からの速攻で食らい付き、4点ビハインドで前半を終えた。

この試合で16得点を記録した細谷将司も「第3クォーターの途中まではついていけた」と試合を振り返るが、問題はその後の展開だ。

「僕を含めてセカンドユニットが出た時にディフェンスの強度が落ち、そこからオフェンスも単調になってしまいました。千葉さんの得意なブレイク、キックアウトからの3ポイントシュートやインサイドでやられて点差が開きました。あそこで踏ん張れなかったのが敗因です」

細谷が言うように、ディフェンスが好調な時は良いリズムで攻めることができた。しかし、ヘルプやローテーションなどディフェンスの小さなミスが積み重なるうちに、チーム全体のバランスが崩れていった。

連敗が続いているが、「今は、一人ひとりの意識が大切」と細谷は言う。「意識して後半にチームとしてエナジーをもう一段階上げることができれば、我慢できると思うんです」

やるべきことは分かっていても実行できなければ意味がない。「それでも、今は下を向いている場合ではありません。今も負けた直後ですがチーム一丸でこれを乗り越えていくしかないと全員でコミュニケーションを取りました。チームは前を向いているので、次の宇都宮ブレックス戦に向けてチーム全員でやっていきたいです」

細谷将司

「自分ならなれる、という自信がなぜかあった」

勝率5割をキープしていたところからの7連敗と厳しい状況にあるが、細谷にとっては今週末に行われるBリーグオールスターゲームが気持ちを切り替えるきっかけになるかもしれない。

細谷は実業団チームを持つ企業に就職するも、プロ選手になる夢をあきらめられずにトライアウトから這い上がった『脱サラ』プレーヤー。練習生からのスタートでステップアップを重ね、ついにBリーグオールスター初出場にたどり着いた。

「昔は自分が出場するとは思っていませんでした。ただ、トップリーグでやれるという自信は、なぜかバスケを始めた中学生の時からありました。『こうなれるんだ』という意志があって、田臥勇太さんと一緒のコートに立つんだって。そういう夢をずっと描いてきて、『自分ならなれる』という自信がなぜかあったんです(笑)」

そのような過程が今に繋がっていると言うが「あとは運ですね、ほぼ運だと思っています(笑)。それでも僕は元チームメートや今のチームメートとか、いろんな人に刺激をもらって支えられてここまで来たので、その人たちのおかげだと思っています」と、感謝の気持ちを忘れずに今もステップアップを続けている。

細谷将司

「キャリアがなくて、小さい人間でもやれている」

オールスター初出場が決まった時は「素直にめちゃくちゃうれしかったです。でも、やっぱりその時も『運だな』と思いました(笑)」と言い、その理由をこう明かした。

「たまたま古川(孝敏)さんがケガをしていた時期でしたし、そういうことを考えると運だなと。本当は一緒にプレーしたかったので残念だったんですけど、篠山(竜青)さんがケガをしてしまって、僕がたまたまスターティング5に選ばれたのも、言い方は変ですが運みたいなものを感じました。でも振り返ると小学校の時からそういう運がある人生だったので、この先もまた何があるんだろうと思ってワクワクしています」

オールスターゲームでは、普段あまりBリーグに接する機会がない人も細谷のプレーを見ることになる。オールスターゲームでアピールしたいポイントを聞くと、細谷は「やっぱり3ポイントシュートです」と答え、こう続けた。

「そして僕みたいにキャリアがなくて、こんなに小さい人間でもやれているんだぞ、というところを見てほしいですね。それで他の人が勇気や希望をもらってくれて『僕もプロを目指そう』とか。そう思ってくれる人が、一人でもいたら僕は本当に幸せですし、プロのオールスターのコートに立てている意味があると思います」

自分の可能性を信じて努力を怠らなかった細谷は、オールスター選手となるが、「ほぼ運です」と繰り返し語るところから察するに慢心は一切ない。『努力の人』はオールスターの経験を糧にして、また一つ成長してくれそうだ。