次はBリーグ「2つ取って本物」
関野剛平に追い風が吹いている。昨夏にレバンガ北海道からサンロッカーズ渋谷に移籍し、開幕からスタメンに定着。決して器用な選手ではないが、エナジー全開のディフェンスで立ち上がりからチームに勢いを与える役割をこなしている。
「僕の仕事はディフェンスで、それ以外はあんまり役に今のところ立てていません。そこだけは僕の仕事と思って、入った時には全力でディフェンスをすることを意識しています」と語る彼は、天皇杯のファイナルラウンドでも3試合ともに先発出場。プレータイムはいずれも15分以下と長くないが、「このチームのどの選手よりも僕が一番優勝したかった。この気持ちを全開で出すことができて良かった」と満足度100%の笑みを見せた。
SR渋谷への移籍は彼にとって飛躍への転機となった。主力にベテランが多い北海道では、彼の激しいディフェンスがチームとして連動せず、そのプレーは評価されても結果に繋がらない難しさがあった。それがSR渋谷では、関野のハッスルがチーム全体に波及して、彼が出だしで勢いを付ければローテーションで代わった選手も関野と変わらない強度でプレーする。関野は言わばペースメーカーを果たしているわけで、その仕事の価値は誰よりもヘッドコーチの伊佐勉が認めている。
移籍を決断した時のことを関野はこう振り返る。「今年はディフェンスから走るチームを作りたいというヘッドコーチの話がありました。レオ(ベンドラメ礼生)さんのようにコミュニケーションが取れる先輩がいるし、スタイル的にも良いと思って加入を決めたら、続々と選手が揃って、すごく楽しいチームになって。個が強い人がいるわけじゃなく、みんながみんなのことを思ってプレーできて、本当に良いチームに来ることができたと思っています」
「気持ちは爆上げ」で「人生で初のタイトル」
関野にとって今回の天皇杯優勝はなんと「プロで初タイトルじゃなく、人生で初のタイトルです」だそうだ。
「僕自身、小学校からずっと優勝したことが一度もなかったんです。ミニバスから準優勝だらけで、自分が出ている試合で優勝したことがありませんでした。絶対に勝ちたい、絶対にリングが欲しいという気持ちで、そしてこの決勝のチャンスが来たので、昨日から気持ちは爆上げでした(笑)」
優勝の味がいかに甘美か知った今、その欲求はさらに強くなっている。「まず天皇杯のタイトルを取りましたが、リーグもあります。2つ取って本物だと思います。天皇杯だけだったら、組み合わせがラッキーだったよねとか、川崎は人数がいなかったから、と思われても仕方ない。そう言われないためにも天皇杯が終わったら次はリーグ戦で、しっかりチャンピオンシップに行って、強いチームが集まるところでまた優勝できたら本物だと認めてもらえます。そこを目指していきたい」
SR渋谷は天皇杯優勝により今シーズンから採用している自分たちのスタイルが間違っていないとの確信を得られたことだろう。それは関野も同じで、そのスタイルの核となる部分に自分のプレーがあることに気持ちを奮い立たせている。
「僕のディフェンスを上手く生かしてくれるようなチームスタイルなので、僕としては本当にチームにいやすい、やりやすいと思います」
SR渋谷について彼が気に入っているのは、全員が平等に責任を持って前を向いてプレーしていることだ。「チーム全員が本当に勝つ気でプレーしています。メインの選手しか出ないようなチームだったら他の選手たちの気持ちにズレが出てきますが、それがなく全員で戦っています。僕だけじゃなくみんな感じているので、それが強さの秘訣だと思います」
その強さが本物かどうか、それを証明するのが関野を始めSR渋谷の選手たちの次の目標になる。『一発屋』で終わるつもりは毛頭ない。チームとして真の強さを身に着け、個々としてもレベルアップしていく。関野の挑戦はまだまだ続く。