「先輩に追いつき、追い越せの気持ちで」
12月中旬に大学のシーズンが終わり、大学生がBリーグの各チームに合流している。八村塁と同級生となる今年の大学4年生はタレント豊富だ。中村太地(法政大)はバスケットボール部を退部して今シーズン開幕前に京都ハンナリーズとプロ契約を交わし、開幕から先発ポイントガードとして活躍中。盛實海翔(専修大)は、昨シーズンと同じくサンロッカーズ渋谷でローテーション入りを果たし、中村浩陸(大東文化大)は大阪エヴェッサで加入早々に主力ガードの一人となった。
また、インカレMVPの牧隼利も琉球ゴールデンキングスに加わり、出場機会を早々に確保している。そして、牧隼利との二枚看板として筑波大を支えた増田啓介も昨シーズンに続き特別指定選手として12月末から川崎ブレイブサンダースに加入し、即戦力の働きが楽しみだ。
3年時の特別指定に続き、今回も川崎を選択した理由として増田は、チームの雰囲気が良いこと、中でもある先輩の存在を挙げる。「ヤス(青木保憲)さんという福岡大附属大濠高校、筑波大の先輩がいて、昨シーズンにお世話になった先輩方が優しくしてくれました。そして強いチームで、声がかかった時は迷いなく行きたいと思いました」
そして、昨シーズンとは一転し、地区首位を快走する川崎の現状を「去年いた時よりも本当に会場の雰囲気、チームの完成度がもう一段階、二段階上になっている。自分も同じように成長していきたいです」と頼もしく見ていたと明かす。
12月最終週の滋賀レイクスターズとの連戦からベンチ登録を果たした増田だが、この試合で計3分半の出場に留まった。これは冒頭で触れた同世代のライバルたちと比べると物足りない数字だが、そこに対して「意識はそんなにしていないです」と言うが、同時に良い刺激になるとライバル心も垣間見せる。
「大濠でチームメートの太地はもう活躍しています。牧も100%活躍すると思いますし、盛實は去年から活躍していて、同級生からは良い意味で刺激をもらえています。焦る気持ちはないですが、自分のモチベーションが上がらない時があったとしても、同級生が頑張っているから自分も負けられないという気持ちにさせてくれます」
「フレッシュマンらしく何事にも全力で、ハードに」
増田のポジションはスモールフォワードで、さらにシューティングガードもこなせる機動力とアウトサイドシュート力を備える。だが、川崎のこのポジションには経験豊富な選手が揃い、リーグ随一の層の厚さだ。プロは試合に出て結果を残してこそ、という考えもある中、このあえて過酷な競争の中に飛び込む心境を増田はこう語る。
「自分は上手くないのでどこのチームに行ってもすぐに出られるとは思っていませんし、川崎はどこよりも選手層が厚い。だから、なおさら頑張らないといけないですし、さらに自分を磨いていきたい。今、自分は序列でいうと一番下なので、先輩に追いつき、追い越せの気持ちで取り組んでいきたいです」
このように控え目な発言をする増田だが、一方で負けん気もしっかりと持っている。「ただ、バスケをやっている人なら誰でも試合に出たい。まずは練習でしっかりアピールして、そこでプレータイムを勝ち取って徐々に試合に絡んでいきたい」
ファンに自身のどんな姿をアピールしていきたいのか聞くと、「チームで一番若いので、フレッシュマンらしく何事にも全力でハードにプレーしていきたいです」と締めくくる。
川崎ではマティアス・カルファニと篠山竜青、2人の主力が戦線離脱している。リーグ随一の強度の高いプレーを40分間通していくためには、プレータイムのシェアが大事であり、サイズと機動力、アウトサイドシュート力を備えた増田が、これからプレータイムを勝ち取っていくチャンスは十分にある。同級生たちに負けないインパクトを増田がもたらせれば、川崎が後半戦も勢いをキープするための大きな起爆剤となる。