想像を超えたスティーブの存在感
ウインターカップ男子決勝戦、福岡第一と福岡大学附属大濠による『福岡決戦』は、75-68で福岡第一が勝利し、2連覇を達成した。
勝敗を分けたのはエースのパフォーマンスだった。大濠のエース横地聖真は、福岡第一の『エースキラー』である内尾聡理の徹底マークに苦しみ、ドライブで抜いたと思えば、クベマジョセフ・スティーブのブロックショットを浴びた。またローポストでボールを受けると、すぐさまダブルチームに来られ、自由にプレーさせてもらえなかった。
この3段構えのディフェンスに手を焼いた横地は、ほぼフル出場となる39分間のプレータイムで9得点2アシストに封じられた。
「なかなかボールが上手くもらえずに、もらってもプレッシャーがすごくて、ドライブに行ってもブロックされて、やりづらかったです」
こうして、得点源を抑えられた大濠はどのマッチアップでも後手を踏み、攻め手を欠いた。特にスティーブのインサイドでの存在感には大きく苦しんだ。
スティーブは31得点20リバウンド11ブロックとすさまじいパフォーマンスを披露。マッチアップした木林優も「スティーブが強すぎました」と脱帽し、横地も「スティーブに第1クォーターからずっとやられてしまった」と悔やむ。
孤軍奮闘の15リバウンド
特に大濠が苦労したのがリバウンドだ。スティーブの攻撃をどうにか防ぐも、そのこぼれ球を再びスティーブに押し込まれ、さらにはロングリバウンドやフィフティーフィフティーのボールがほとんど福岡第一に渡り、ディフェンスリバウンドの確保が困難だった。各クォーターの出だしに点差を離される場面が多く、そのほとんどがセカンドチャンスポイントによる失点だった。
横地も「第2クォーター、第3クォーターにディフェンスの部分でスティーブにやられました。もう少しフィジカルにやってリバウンドを取ればいけたと思います。ディフェンスの部分で思っていたよりやられたので、もっと早く対処できれば良かった」
勝負の世界に『たられば』は意味がない。しかし、このディフェンスリバウンドさえ取れていたら展開が変わっていた可能性は高い。横地が「もっと早く」と語ったように、横地は最終的に15のディフェンスリバウンドを記録している。「自分は得点に絡めなかったですけど、得点以外のことでは貢献できたと思う」と前を向いたのは、特にリバウンドでの貢献があったからだ。
「みんながエースとして活躍させてくれました」
横地は決戦前に「エースとして得点を取って勝利に貢献したい」と語っていた。
結果だけを見れば、エースの仕事を全うできなかった。それでも、チームは最後まで横地をエースと見なした。
勝敗がすでに決していた最終クォーター残り13秒、大濠の最後のポゼッションで横地はボールを託された。そして、トップからブザーと同時に3ポイントシュートを成功させた。
「自分はボールをもらえず、シュートも決めてないんですけど、選手もベンチも先生も『お前が行け』と言ってくれました。みんなが自分を頼ってくれたので、最後までエースとして活躍させてもらいました」
最終スコアは68-75。一時は20点を超えるビハインドを背負ったが、最後の最後で点差を1桁にした。あのラストショットは大濠にとって、そして横地にとって3点以上の価値のあるものだった。
「最後にみんなが託してくれたあの3ポイントは自分たちが頑張ってきた努力というか、成功の証みたいな感じだと思います。本当に決められて良かったです」