ニックと肉

『バスケット・カウント』にとっては年末の恒例行事となったニック・ファジーカスとの忘年会も今年で3回目。初回は焼肉、2回目はピザハウスだったが、ニックが日本国籍を取得して迎えた今回は『和』のテイストで勝負すべく、しゃぶしゃぶのお店へ。とはいえ川崎駅からすぐ近くの、ニック行きつけのお店。今回ニックは数カ月前に生まれたばかりの長女エミーちゃんの育児で忙しい妻ステファニーさんをサポートすべく、長男ハドソン君を引き連れて登場。第1回ではまだママのお腹の中にいたハドソン君がモリモリ食べる中、ニックにバスケットボール選手はもちろん、父親としても2019年を振り返ってもらった。

「一番の思い出は、アメリカ代表との試合」

──まずは2019年を振り返りたいのですが、バスケットボール選手としてどんな1年でしたか。

昨シーズンのBリーグでは失望する形で終わってしまったけど、ワールドカップ出場という大きなことを成し遂げられた。日本の皆さんにはワールドカップの予選通過を誇りに思ってもらいたい。本大会の結果は望んだものではなかったけど、同時にオリンピックに向けて何が足りないのかが明確になった。

──ワールドカップは5戦全敗と厳しい結果に終わりました。その中でもニュージーランド戦の31得点など、世界を舞台に存在感を示しました。一番の思い出を教えてください。

ニュージーランド戦の31得点は楽しかったけど、彼らとは大会前に強化試合で2度当たっていたので、どんな相手なのか分かっていた。一番の思い出は、やっぱりアメリカ代表との試合だね。スティーブ・カー、ジェイ・ライトという素晴らしいコーチから、自分が現役を続けてこうして活躍していることを誇りに思うと言われた。とても素晴らしい経験だったよ。

家族もワールドカップを楽しみにしていたし、日本代表が勝つことを望んでいた。勝った試合についてあれこれ話すのは楽しいからね。勝つチャンスを見いだせたらもっと素晴らしいものになったけど、ワールドカップに出場したことは特別だ。

──ジェイ・ライトは名門ビラノバ大のヘッドコーチで、かつてNCAAのスタープレーヤーだったニック選手と面識があるのは分かります。でも、カーとはどんな繋がりですか。

カーは、僕がNBAドラフトにエントリーした時にフェニックス・サンズのGMで、僕をワークアウトに誘ってくれた人だよ。随分前のことなのに、僕のことを覚えてくれていたのはうれしかった。

ニックと肉

「試合よりも練習の方が激しいぐらいだ」

──失意の昨シーズンから一転、今シーズンの川崎ブレイブサンダースは開幕から好調です。この変化をどのように感じていますか。

昨シーズンとは、コーチが代わり、日本人選手も新たに獲得して、外国籍選手も新しく入れ替わった。新しいメンバーが多いけど、みんな即戦力として活躍していて、ここまで早くチームが軌道に乗ったことには興奮している。

ケンジ(佐藤賢次ヘッドコーチ)は激しいプレー、チーム内のより激しい競争を求めていて、ここ数年の主力と控えが決まっているような状況を変えた。練習では常に同じポジションの選手が競い合っていて、誰がより多くのプレータイムを得るのかは僕たち自身にも分からない。普段の練習から緊張感を持って取り組むことができている。試合よりも練習の方が激しいぐらいだ。

──今の川崎はタイムシェアを重視してハードワークを実現しています。それでもニック選手は1試合30分以上の出場も多いですが、34歳とベテランの域にある今では少々キツいのでは?

ケンジとプレータイムの話はしたことがない。今の起用法は問題ないよ。ケンジとは8年間ずっと一緒だし、すべての試合で彼の求める強度のプレーができると分かってくれている。

ニックと肉

「新しいニックを見せられているんじゃないかな」

──燃え尽きるまで現役生活を続けそうなニックですが、何歳までプレーしたいですか?

年齢はあくまで数字でしかないよ。とはいえ折茂(武彦)さんの年齢までプレーできるかと言われたら、それは絶対に無理だけどね(笑)。

確かに34歳は若くないし、あと数年後にはプレータイムが減ってきて、今ほど効果的な働きができなくなるかもしれない。ただ、まだ今はそういう時ではない。30分以上のプレーでも問題はないよ。

今シーズンはここまで堅実なプレーができているけど、もっと良い活躍ができる。チームスタイルやチームメートが変わったことで、新しいニックを見せられているんじゃないかな。数年前のように僕が1試合平均で27点、28点を取るチームではない。そういう形になったらチームとしてはうまく機能しなくなるだろうね。今までとは違うスタイルで、これまでと同じようにチームの勝利に貢献しようとしているんだ。