船橋市立船橋

「久夫先生と真剣勝負ができるところまで高めてくれた」

「選手にありがとうという感謝の気持ちと、自分の不甲斐なさ。もうちょっと選手たちをうまく生かすことができたんじゃないかという悔しさと、終わっちゃったという寂しさ」

こうした感情から船橋市立船橋(千葉)の斉藤智海監督は大粒の涙を流した。

ウインターカップ4日目、メインコート行きを賭けた男子3回戦で船橋市立船橋は明成(宮城)と対戦した。

エースの和田将英が「先手必勝をモットーにやってきましたが、それができず最初に流れを持っていかれたので、第1クォーターの出だしに戻りたい」と語ったように、市立船橋は出だしでつまずいた。開始1分半でオフェンスリバウンドを5本も取られ、和田も早々に2ファウル。ターンオーバーから速攻を浴び、センターの楊博もファウルトラブルとなり、自分たちのバスケットを出せないまま第1クォーターで15点のビハインドを背負った。

その後、樋口陸のボールプッシュから速攻を連発して流れを取り戻し、和田がフィニッシャーとなって得点を量産。第3クォーター残り6分には、樋口のフリースローで一度は同点に追いついた。だが、その樋口が4つ目の個人ファウルをコールされると、明成のゾーンディフェンスを攻めあぐね、山﨑一渉を中心とした猛攻を浴び、集中力が切れた市立船橋は73-95で敗れ、冬が終わった。

船橋市立船橋

ゾーンを攻めあぐね「思い切りの良いシュート打てず」

斉藤監督は「ゾーンには慣れている子たちなのでよく見えてはいたんですけど、いざシュートとなった時に190㎝の子が来るので、思い切りの良いシュートが少なくなったのは事実」と、明成のゾーンディフェンスに手を焼いた。

199cmの山崎をトップに置き、190cm前後の選手たちで固めたゾーンは、平均身長が180cmと小柄な市立船橋には脅威以外の何物でもなかった。

だが、斉藤監督はここまでたどり着いた選手たちを誇りに思っている。

「きっと僕ら以外は広島皆実や、中部第一が明成とやるんだろうと思っていたと思います。してやったりというゲームができたのは彼らのおかげなので、本当にありがとうと言いたい。明成さんとも何度か練習試合とか招待試合でご一緒させていただいて、ウインターのコートで久夫先生と真剣勝負ができるところまで、彼らが高めてくれたので感謝しかありません」

船橋市立船橋

「チームを勝たすことができなかったので悔しい」

エースの和田は開始1分半で2ファウルになったにもかかわらず、その後はファウルを抑えてフル出場し、31得点を挙げて接戦に持ち込んだ。それでもチームは敗れ、「勝てないと、そのシュートは意味がないと思っている」と話す。

「エースなので、チーム全体を背負って戦わないといけないのですが、自分にはまだそれが全然できていなくて、チームを勝たすことができなかったので悔しいです」と、とめどない涙が頬を伝った。

中部第一との試合では、モットーとする先手必勝を体現し、前半で18点のリードを奪って逃げきった。だが、強みであるはずの序盤にアドバンテージが取れず、追いつくのに力を使い切ってしまった。和田も出だしの悪さに「心が折れかけていた」と話した。それでも、そこで崩れずに接戦まで持ち込めたのは、仲間たちの声が聞こえたからだ。

「ベンチからの声や応援席の声が、自分の曲がった心を真っすぐに戻してくれました。日本一のベンチ、応援だと思っています」

きれいごとではなく、ベンチや観客席の応援は時にコート上で戦う選手たちの力になる。「ベンチのように日本一にはなれなかった」と語る和田の頬を、再び涙がつたった。

市船での3年間で得た経験を糧にし、「次のステージでチームを勝たせられるような選手になりたい」と話す和田が、どのようにステップアップしていくか、今後に期待したい。