県立津幡

優位にあった大阪桐蔭は、アクシデントに泣く

ウインターカップ3日目、県立津幡(石川)と大阪桐蔭(大阪)のカードは最後の最後まで分からない大接戦となった。

高さはないがスピードを武器に平面のバスケットで強さを見せる津幡は、リバウンドから鋭くトランジションへと持ち込む得意のバスケットを展開するも、ゴール下を守るエドポロ・アニイタのプレッシャーにシュート精度を狂わされて得点が伸びない。

対する大阪桐蔭は司令塔の祢宜菜々葉が前日に右足アキレス腱を痛めていたが強行出場。テンポ良くパスをさばいてゲームメークするも、右足を気にしながらのプレーを強いられて自ら切り込むシーンはほとんど見られず。前半は両チームともオフェンスで良いプレーが続かず、差がつかなかった。

それでも後半、その祢宜が右足をかばうことなく100%のプレーをするようになると、大阪桐蔭のオフェンスが活性化。これで流れをつかみ、第3クォーター残り3分、大崎莉瑚の3ポイントシュートが決まり52-39と抜け出した。

これで試合の趨勢は決まったかに思われたが、昨日の祢宜に続いて大阪桐蔭をアクシデントが襲う。残り2分、オフェンスリバウンドに飛び込んだアニイタが膝を痛めて続行不能となった。このアクシデントによりインサイドの優位が逆転。2桁のビハインドはあったが、津幡は一つのディフェンス、一つのオフェンスに最大限の集中力を発揮して点差を詰めていく。大阪桐蔭も祢宜を中心に踏ん張るものの、その祢宜がケガを抱え、アニイタも不在。もともと先発の5人を引っ張るチームで、終盤は体力面で厳しいものがあった。

県立津幡

ラスト10秒から、気持ちのこもったプレーで逆転

残り10秒、祢宜にフリースローを1本を決められて69-71。この試合、常に祢宜とマッチアップしてきた津幡の高本愛莉沙は、ここまではスピードに乗ったドライブからパスをさばいてチャンスを作ってきたが、この勝負どころで迷わず自分でフィニッシュに行き、フリースローをもぎ取る。「最後はファウルがこんでいたので、自分で行けという指示でした」と高本は言う。

2本決めれば同点のところ、2本目がリングに嫌われる。万事休すかと思われた瞬間、腕を伸ばした中道玲夏がリバウンドを奪取。そのままファウルを受けてフリースローを獲得した。プレッシャーのかかる場面ではあったが「初戦では1本外しましたが、2回戦ではすべて決めていたので、自信を持って打つことができました」というフリースローを2本とも沈めて72-71と逆転。このままタイムアップを迎えた。

劇的な逆転劇となったが、東山耕平コーチは終盤よりもその前の時間帯、「あそこで全員が集中を切らさずプレーしてくれた。あそこで耐えたことを褒めてあげたい」と振り返る。ポイントガードの高本は「私たちと言うよりは、ベンチの全員がずっと『集中!』と声を掛け続けてくれたおかげだと思います」と語った。

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「インターハイに出られない悔しさを晴らすために」

勝利が決まった瞬間、高本は号泣していた。「大阪桐蔭はインターハイベスト4のチームで、私たちは挑戦者でした。今年はインターハイに出られない悔しさがあって、それを晴らすためにずっと頑張ってきたことを一気に思い出したら涙が出てきました」と高本は振り返る。

「京都精華さんに勝てば、次は岐阜女子さんだと思っています。去年も準決勝が岐阜女子さんで、そこで負けているので、今回は倒せるように頑張りたいです」

どんなに苦しい状況でも、あきらめなければ活路は見いだせる。負けたとしても、次のチャンスは訪れる。今大会の津幡はそうやって逆転勝利を収め、インターハイの悔しさを晴らした。岐阜女子へのリベンジに挑む前に、明日の準々決勝では京都精華(京都)が立ちはだかる。