文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

「ダブルチームを仕掛けてこなくて驚いた」

10月10日、新潟アルビレックスBBは敵地でアルバルク東京と対戦。オーバータイムにもつれる熱戦を、残り3秒に決勝点をあげる劇的な結末によって97-95で制した。この試合、新潟の勝利の立役者の一人となったのがダバンテ・ガードナーだ。

第4クォーター終盤、この日2つ目のテクニカルファウルをもらったことで無念の退場となるが、約35分の出場で40得点14リバウンドと大暴れ。203cm132kgのサイズを生かした迫力満点のアタックでゴール下に侵入すると、巨体に似つかわないクイックターンでマッチアップ相手をかわして得点。また、体勢が崩れるオフバランスでも次々とシュートをねじ込み、ゴール下をまさしく『支配』していた。

前日チームは敗れたが、ガードナー自身は35得点をマーク。連夜の大活躍となったが、その大きな要因が、アルバルク東京がダブルチームを仕掛けず、1対1で守ることに固執したことだ。

「これまでキャリアを通してダブルチームをよくされていたので慣れている。なので相手がダブルチームを仕掛けてこないことには少し驚いた。また、ダブルチームが来ると思った時には早めに仕掛け、シュートを決めるように心掛けた」

このように語るガードナーは、相手がダブルチームを仕掛けず1対1で守り続ける対策をとってきたのはチームメートのおかげだと言う。「チームには素晴らしいシューターたちがいるので、ダブルチームで僕に来るのは(シューター陣をフリーにするので)難しかったかもしれないね」

また、ガードナーの特徴と言えるのが、時には自陣からのボール運びまでこなすなど、ボールハンドリングにも優れている点。これは「大学入学前、16歳か17歳までポイントガードをやっていたからだよ」という経験が生きている。

ファジーカスの得点ランク独走に「待った」

2015-16シーズン、当時NBLの西宮ストークスに加入したのが日本でのプレー1年目。昨シーズンから新潟に所属するガードナーにとって、前身のトヨタ自動車時代を含め、A東京に勝利するのは今回が初めて。「これまでずっと勝てなかった相手だから、この勝利は自分にとって大きな意味を持っている。それにシーズンが始まったばかりの中、この勝利を良いきっかけにしてチームとしても調子を上げていきたい」と、リーグ屈指の強豪撃破を自身、そしてチームとしても上昇気流へと乗る契機にしたいと続ける。

ただ、途中退場したことには「本当にチームが勝ってうれしかった。もう二度と退場しない。チームメートがロッカールームに戻って来る時、申し訳ない気持ちがあった。オースティン(ダフォー)がしっかりと試合を決めてくれて良かった」と反省しきりだった。

まだ、4試合を終えたばかりであるが。この2日間での大暴れによりガードナーは平均30.3得点と、ファジーカス(26.8得点)を上回ってリーグトップに立っている。昨季もリーグ2位の平均21.9得点を挙げたガードナーであるが、1位のニック・ファジーカスは27.1得点と、少なくない開きがあった。しかし、今シーズンの得点王争いではガードナーがファジーカスの独走に待ったをかけるのではないか。それだけの期待を抱かせるプレーだった。

ただ、本人が気にしているのはあくまでチームの勝利だ。「まず、チームとしてプレーオフ進出を果たしたい。まだ日本に来てからプレーオフに行っていない。個人的な結果よりも、チームとして結果を出すことが重要だと考えている」とガードナーは言う。

巨体を生かしたパワーだけでなく、巧みなボールハンドリングや軽快なステップワークで相手をかわすなど、テクニックにも長けているガードナー。文字通り剛と柔を備えた彼と、日本人シューターたちの連携がこれからもっと磨かれていけば、新潟は中地区の上位戦線に絡んでいけるはずだ。