文=丸山素行 写真=野口岳彦

「まだまだ最後に勝てるようなチームじゃない」

昨日行われた新潟アルビレックスBBとのホーム開幕戦、アルバルク東京は新潟のダバンテ・ガードナーの個人技に手を焼きながらも、『個』の新潟に対して5人が2桁得点を記録する『全員バスケ』で勝利した。

そんなチームの中心にいたのが田中大貴だ。20得点6アシストはともにチーム最多。それでも試合後の彼は「最低限このくらいはやれるようにしないといけない」と自らに高いスタンダードを課している。「うまく行っている時と行かない時、我慢できない時とできない時、まだまだ最後に勝てるようなチームじゃないと思うので。試合中にコミュニケーションをとりながら良くしていきたい」

前半は6得点5アシスト。フィニッシュに直結する好アシストを連発しチームにリズムを与えた。また結果的に勝負の分かれ目となった第3クォーターには、7分弱の出場で11得点を挙げる爆発力を見せた。前半と後半でプレースタイルを変えたかのように映ったが、「アタックした時に空いてればパスを出しますし、行けたら行きます。パスをしようとかシュートを打とうとかは考えていません」と、あくまで試合状況に応じたプレー選択の結果だという。

馬場に期待はするも「彼はまだルーキー」

開幕節では結果を残せなかった馬場雄大も、2発のダンクを含む11得点を挙げてそのポテンシャルを発揮した。「同じ2点かもしれないですけど、彼がアタックすることによって会場も沸きますし、チームに勢いが出ると思うので、今日は良い仕事をした」と後輩を称える。

馬場は日本代表に選出される有望株で、A東京での期待値も高い。だが田中は「彼はまだルーキーです。自分は今年4年目ですし、違いが出ないとおかしいと自分は思います。良いものを持っていてもちろん期待してますけど、頼ることは考えたくない」と、中心選手としての自覚を語る。

昨年のA東京はディアンテ・ギャレットというリーグでも屈指のスコアラーが在籍し、田中はチームのためにバランス重視でプレーしていた。だがギャレットが退団したことにより田中にかかる期待と重圧は昨シーズン以上となる。ただ、彼は期待と責任を引き受けると同時に、それを自然体のプレーで表現しようと試みている。

「自分がやらなきゃというより、今日みたいにしっかりアタックしたり、これくらいの点数を常に取ればそれが自然と引っ張っていることになると思います」

これはチームの目指すスタイルと仲間に信頼を置いているからこそ出てくる言葉だ。

「今年に関しては(安藤)誓哉もいいプレーできますし、別に誰か一人がというわけじゃなくてもいいので。ボールを動かして相手が的を絞りにくいオフェンスっていうのを、試合を通じて身に着けていければ点数も増えます。自分ももっとやりやすくなって、良くなると思います」

アンセルフィッシュな田中がチームの中心のいることで、A東京の強さは確立される。常にこのパフォーマンスを持続すれば、A東京は田中のチームだということが自ずと確立されていくだろう。誰かに依存するわけではない全員バスケ、それでいて中心には田中がいる。そんなスタイルを確立できるかどうか、シーズンが進んでいく中でのA東京の変化に注目したい。