相手オフェンスを粉砕した藤永のプレッシャー
千葉ジェッツはレバンガ北海道との水曜ナイトゲームに84-47と大勝し、連勝を3に伸ばした。
千葉は第2クォーター開始から約7分間を無失点に抑えた鉄壁のディフェンスを軸に、トランジションも効果的に決まったことで30-6のビッグクォーターを作った。
このビッグクォーターを作り出したのが藤永佳昭だった。藤永は高い位置からボールマンに張り付き、簡単にボール運びをさせなかった。その結果、ショットクロックを減らし、チームオフェンスのエントリーを遅らせた。
北海道の内海知秀ヘッドコーチが「オフェンスをしっかり遂行するためには、ポイントガードが持ってきて、しっかりしたポジションで受ける必要がある。プレッシャーをかけられ余裕がないままフロントコートに入り、受けるほうも良いタイミングや場所で受けれなくなり悪循環になった」と敗因を分析したことからも、藤永のディフェンスがいかに効いていたかが分かる。
藤永も「本当に効いたと思います」と胸を張った。「その流れからオフェンスもボールムーブがしっかりできていました。チームで守ろうとしていたことが、しっかり徹底して守れていたので、チームとしても個人としても、次に繋がるディフェンスができたと思います」
その時間帯、千葉は藤永と西村文男の2ガードを敷いた。そして、西村も3スティールを記録するなど、藤永と同じくらいディフェンス面での貢献が目立った。千葉を指揮する大野篤史も「文男と2人で小さくなっても、折茂(武彦)さんが2番で来ても、2ガードで行こうと思っていました。そこで彼らがサイズダウンという弱みよりも、強みの方を生かしてくれた」と、2人を称えた。
「他の部分でカバーできる自負はある」
藤永は今シーズン最長となる18分間プレーし、7得点3アシストを記録した。前述のようにスタッツには現れない部分での貢献度も高かったが、こうした素晴らしいパフォーマンスの裏には前節の富山グラウジーズ戦に出場できなかったことへの反骨心があった。
「富山は全員大きいので、オフェンスでもディフェンスでもミスマッチになります。他の部分でカバーできる自負はあるので、悔しい気持ちはありました。今日はその悔しい気持ちをコートで表現できたかなと思います」
大野コーチも藤永の起用法については試行錯誤が続いているという。「富山の時も良いパフォーマンスをしていたんですけど、僕がサイズダウンをするのをすごく嫌がっていたので。変な話、ガードは3人とも良いので、どういうふうに回していこうか悩み過ぎてしまいました。ディフェンスは一番良いですし、努力してシュートも改善してきています。起用法に関しては僕の采配力のなさだと思っています」
低身長でも「プロでできるというのを見てほしい」
藤永のディフェンス力には定評があり、千葉のホームでは藤永が好ディフェンスを見せると、歓声が沸くことがしばしばある。昨日の試合でも、軽快なフットワークで相手のドライブを止めたシーンでは微かに歓声が起こった。
藤永は冗談交じりに「もっと盛り上がってもいいですよね?(笑)」と話したが、目の肥えた観客にとってはそれくらいやってもらわなきゃ困るという心情に駆られているのだろう。
事実、藤永の人気は増しており、「今年は15番のTシャツを着てくれている人が多くいて、自分でも『増えてるな』って実感しています」と、藤永は言う。
そして、時折ファンからかけられる「千葉に来てくれてありがとう」という言葉を励みに努力を続けている。
「なんでプレータイムを減らしてまで千葉にに来たの?とかいろいろ言われますが、そんな言葉を聞くと、本当に千葉に来て良かったなって思います。そういう方々にプレーで恩返ししたい気持ちになりますし、僕みたいに身長が小さくてもプロでできるというのを見てほしいです。少しでもコートで表現して、小さい子に夢を与えたいです」
ミスマッチのマイナス面を吹き飛ばし、大野コーチの信頼を勝ち取った時、子供たちにとって藤永の姿は富樫勇樹と同等のヒーローに映るはずだ。