文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

バランスの良さが光る富山が18点のリードを奪う

敵地に乗り込んで富山グラウジーズとの開幕節に臨むレバンガ北海道。土曜に行われた第4クォーターに痛い逆転負けを喫し、さらには主力の野口大介がケガで戦列を離れる苦しい状況で第2戦を迎えた。

野口に代わって先発したのはルーキーの川邉亮平、特別指定でチームに加わっていた昨シーズンを含めても初先発。その川邉が第1クォーターに放ったシュートをすべて決める7得点とアグレッシブな守備で野口の穴を埋める。しかし、前日に快勝を収めた富山ではエースの宇都直輝が好調。さらには千葉ジェッツから加入した上江田勇樹もシュートタッチが良く、前半で宇都が13得点、上江田が12得点とオフェンスを引っ張り、富山が46-38とリードする。

そして第3クォーターに富山が走る。8-0のランに始まり、内外バランス良く得点を重ねていく。また足を使った守備で北海道に攻めの形を作らせず、フィールドゴール15本中3本(20%)と抑え込んだ。第3クォーター終了時点で69-51と18点差。富山が勝利をほぼ手中にしていた。

最終クォーター、あきらめない北海道の猛反撃

結論から言えば北海道がここから逆転勝利するのだが、残り10分で18点差という劣勢の中、まずチームを強烈にプッシュしたのは伊藤大司だ。伊藤は先週に期限付き移籍が決まったばかりでチームに帯同しておらず、昨日は北海道に残ってパブリックビュー会場でファンとともに試合を観戦していた。それが野口がケガをしたために急遽チームに合流。まさにぶっつけ本番だった。

その伊藤の第4クォーターは、10分間フル出場で得点なし、1アシスト1スティール。それでも、この逆転劇を演出したのは間違いなく彼だった。第4クォーター開始直後にグレゴリー・ウィッティントンの3ポイントシュートをアシストすると、富山のインサイドへの合わせのパスを狙ってスティール、牧全の速攻につなげた。

その後はスタッツに表れないが、逆転に向けてチームを引っ張っていく。連携ができていない中でも常に声をかけてディフェンスを引き締め、そして素早く明確なメッセージを込めたパスでオフェンスを演出していく。ドリュー・ヴァイニーがウィッティントンの1on1を止められないと見ればここにボールを集め、富山のチームファウルがかさめばそこを突いていく。こうして残り3分22秒、約6分半で26-8の猛追を見せた北海道が77-77の同点に追い付いた。

殊勲のウィッティントン「仲間のおかげ」

その直後、強引なドライブを仕掛けた宇都が体勢を崩しながらもジャンプシュートをねじ込み、再び富山にリードをもたらす。関野剛平の執拗なマークに手を焼いていた宇都だが、それでも勝負どころを見極め個人技で仕掛けた。ところが、この強引なプレーで宇都は右足のふくらはぎを痛める羽目に。富山はその後も宇都を強行出場させて劣勢をはねのける役割を託したが、初戦で25得点、この試合でも23得点を奪った宇都が、ラスト3分で得点を奪うことはなかった。

これで流れは完全に北海道へ。走れない富山に対し、ディフェンスリバウンドから走ったウィッティントンがそのままダンクをブチ込んで81-79と逆転。ベテランの桜井良太もフリースローを確実に決めてリードを広げ、85-83で北海道が勝利した。

第4クォーターの14得点、試合を通じてゲームハイの25得点を挙げたウィッティントンは「今日の得点は自分がノーマークの時に仲間がパスを供給してくれたおかげ」と謙遜するとともに、「誰一人あきらめず気迫を持ってプレーできたことが勝利につながった。その気迫を注入してくれたのは伊藤選手であり、その気迫に自分たちも動かされた」と伊藤を称えた。

その伊藤は「急ではありましたが、常に気持ちは準備できていましたし、全く問題ありませんでした」と目を細める。「前半はグレッグとマーク2人と一緒だったので、2人が走れるのはわかっていたので、早い展開を意識してプッシュしていこうと思っていました」と逆転劇を振り返る。「まだまだチームのシステムを全ては理解できていないので、自分がいる時間帯でできること、できないことがありますが、早く理解できるようにしていきたい」と、今後の抱負を語った。