文=丸山素行 写真=FIBA.com

「どんどん打っていこうと思っていました」

水島沙紀はこの1年で選手としての実績を飛躍的に高めた。昨シーズンのWリーグでは急成長を遂げ、トヨタ自動車のファイナル進出の原動力に。そして日本代表の一員としてアジアカップに参加。初の国際大会でローテーションの一角としてチームの勝利に貢献した。そして極め付けがアジアカップの決勝だ。相手は今回からアジアに編入されたオーストラリア。圧倒的なサイズ差だけでなく技術も高い世界のトップチームに苦戦を強いられる日本を救ったのが水島だった。

過密日程で両チームとも足が残っていない後半、最初の3ポイントシュートを決めたのを機に『ゾーン』に入る。相手の厳しい警戒をモノともせずシュートを決め続け、第3クォーターで14得点、第4クォーターで12得点を挙げ、74-73での勝利の立役者となった。

先週行われたアジアカップの『優勝祝賀会』に出席した水島は、ファイナルの絶好調ぶりを「特に工夫はなかったんです」と振り返る。「私は考えちゃうとプレーにつながらなくなってしまうので、考えないことが一番だと思いました。決勝までは調子が悪く、チームに貢献することができなくて、決勝の前半でも自分のプレーが思ったようにできなくて、後半はトムさんやチームのみんなに信頼してもらって出させてもらえたので、空いたらどんどんシュートを打っていこうと思っていました」

初の国際大会を振り返り、「代表に選ばれた時は経験のある選手が多いので緊張したんですけど、やっているうちに『自分もやらなきゃ』という気持ちになって、そこまで緊張はなかったです」と言う。

『世界の壁』に直面するかと思いきや、結果としてあっさりと乗り越えた。「体格も全然違ってきて、その面では国内でできていたことができなかったりした部分はありましたが、体力の面では日本のほうが走れます」と、世界と比較した場合の弱みよりも強みを意識して戦うことができていた。

ファイナルで9本中7本を沈めた3ポイントシュートの印象が強いが、本人曰く「ドライブで切っていくこと、それで得点するなりパスをさばいたり」が本来の仕事。3ポイントシュートについては「今までは空いたら打つという気持ちでしたが、こうやって大舞台で決めることができて自信になったので、どんどん狙っていきたい」とさらなる強みにするつもりだ。

トム・ホーバス「競争が激しいから伸びないと」

ヘッドコーチのトム・ホーバスは「チームが疲れている中で、水島のエナジーはすごい助かった。彼女がフレッシュで3ポイントシュートも良くて助かった」と、決勝での働きをあらためて称える一方で、今後のワールドカップとオリンピックを見据えて「僕のバスケが分かっているけど、2番ポジションはいい選手がいっぱいいて競争が激しい。だから今シーズンはもっとみんな伸びないと」と注文を付ける。

水島にとっては今週末に開幕するWリーグが新たな勝負の場になる。「新しい選手が結構入ってきたので、チームとしてしっかり作り上げること、そこをしっかり引っ張っていきたい。まずは自分の中で一歩一歩成長していかないと。国内で選考が始まるのでしっかり生き残れるように」と抱負を語った。