文=丸山素行 写真=FIBA.com

先発に抜擢された藤岡の重圧を吹き飛ばした『手紙』

アジアカップ3連覇を成し遂げた日本代表。その中でも目覚ましい躍進を果たしたのが大会ベスト5に選ばれた藤岡麻菜美だ。アジアカップの『優勝祝賀会』に出席した藤岡は「アジアカップ3連覇という素晴らしいことに貢献できたんだなと、期間が空いてもあらためて思います」と笑顔で語った。

特に印象的な活躍を見せたのは準決勝の中国戦だった。ヘッドコーチのトム・ホーバスも「吉田(亜沙美)がケガをして、藤岡がスターティングメンバーになった。中国がフルコートプレスを仕掛ける中、彼女の速さとかアグレッシブなドライブが生きた」と称える。指揮官にとっても、JX-ENEOSサンフラワーズでのルーキーシーズンを通して指導した藤岡の飛躍は相当にうれしかったのだろう。「昨シーズンJXで1年間いろいろ言ったんです。それを彼女はちゃんとやってくれました」と称える。

グループリーグから吉田や町田瑠唯とのツーガードで効果的な働きを見せていた藤岡だが、準決勝の中国戦という大一番で膝を痛めていた吉田の欠場が決まり、先発出場することに。今大会が初代表の藤岡にとって、その負担は計り知れない。だがその時に吉田から一通の手紙をもらっていた。

「『こういう形でスタートをまかせることになったのは申し訳ない。でも麻菜美にとってはすごいチャンスだと思うから、日本のポイントガードは藤岡だっていうところを見せつけてこい』という内容の手紙をもらいました」と藤岡は明かす。

「『自分はいつでもフォローするから、何か困ったことがあったら聞きにくればいいしベンチを見ろ』と書いてありました。『麻菜美にもチャンスだよ』って書いてあった時に、絶対悔しい部分も吉田さんにあるのに、それを自分に託してくれてるっていういろんな思いが手紙で伝わってきて、自分がやるしかないっていう気持ちになりました」

吉田の手紙のおかげで重圧は吹き飛び、持ち味である強気のボールプッシュで仕掛けた。高さのある中国に日本が苦戦を強いられる中、クロスオーバーから仕掛けるドライブやパスといった藤岡のプレーが効果的に決まる。結果、藤岡は19得点8アシスト14アシストとトリプル・ダブル級の大活躍。吉田の不在を見事にカバーし、日本を勝利に導いた。

「ライバルとして、いつかは超えていきたい存在」

大会前は3番手のポイントガードだった藤岡だが、アジアカップでのパフォーマンスで評価は急上昇。リオ五輪の強化合宿中は『憧れ』でしかなかった吉田の存在が『ライバル』へと変わりつつある。もともと、2020年の東京オリンピックにメインのポイントガードとして参加するのが藤岡の目標だ。そのためには吉田を超えなければならない。それを誰よりも理解しているのは藤岡自身だ。「これからはライバルとしても見ていかないと、いつまでたっても超えられない。いつかは超えていきたい人で、自分にとってはかけがえのない存在です」

また、アジアカップで優勝したことで、「オリンピックで金メダルを取る」というトム・ホーバスの目標が現実味を帯びてきたと藤岡は言う。「アジアカップの前にも『アメリカを倒して金メダルを』とトムさんが言っていました。自分の中ではモヤッとした感じの、すごすぎる夢なんじゃないかなって思ってたんですけど、今回アジアで3連覇してオーストラリアに勝ったということで、それが届かない夢じゃないっていう、現実味が出てきたと感じました」

アジアカップでフル回転した後は、休む間もなくユニバーシアード競技大会にも参加。ここではチームで最も実績のあるリーダー、そしてキャプテンとしての経験も積んでいる。藤岡の『一番熱い夏』はこれで終わり。国際大会で得難い経験を積んで大きく成長した藤岡は、今度はJX-ENEOSでWリーグ10連覇という偉業に挑む。

3年後の東京オリンピックを26歳で迎える藤岡。この夏のような濃密な経験を重ね、どこまでレベルアップできるのかが楽しみだ。