山本エドワードは2010年から島根スサノオマジック一筋のキャリアを送るポイントガード。島根から見ても2010-11シーズンのbjリーグ参入に伴う最初のドラフトで指名した選手の一人であり、まさしく『島根の顔』である。Bリーグ初年度の昨シーズンはチームで唯一レギュラーシーズン全60試合に出場、チーム最長の平均26.5分のプレータイムを得て、平均9.4得点と『点の取れるポイントガード』としてチームを牽引し、初年度での昇格に大いに貢献した。
新シーズン開幕を前にチームは改革路線へと舵を切り、山本と岡本飛竜の2人だけが残留。ヘッドコーチも代わりすべてが新しくなったチームで、山本だけが島根7年の歴史を背負ってプレーする。B1での挑戦を控えた山本に話を聞いた。
「島根の熱量の中でプレーできているのはありがたい」
──いきなり失礼かもしれませんが、ハーフですか?
いや、外国人なんです。両親ともにフィリピン人です。父が早くに亡くなり、母が日本で再婚しました。新しいお父さんが日本人で、姉と僕も日本にやって来て暮らすことになりました。それでも小学校からずっと日本にいて、義務教育もこちらで受けたので、bjリーグに入る際に日本人扱いという形でプロになれました。
──バスケを始めたのは日本に来る前ですか?
遊び程度ですが、フィリピンでは国技のようなものなので、自然とバスケをやる環境がありました。外にバスケットコートがあって、近所の子供たちが集まってプレーするような。そういう環境で育ったので、日本に来てもバスケは続けました。
──では、生まれはフィリピンですが育ちは島根ということですね。
小学校と中学校の頃は隣の鳥取県米子市にいましたが、高校(北陸)と大学(大東文化大)は県外です。それでも今は実家も島根にありますし、ゆかりのあるチームなので、自分としては島根がすごく過ごしやすいというのはあります。
──「お客さんの熱気がすごい」とよく言われる島根ですが、実際はどうですか?
僕は移籍することなく島根で8年目になりますが、やっぱり熱量がすごいと思います。チームの勝ち負けによって観客数に多少の変動はありますが、創設1年目からずっと応援してくれるブースターさんもいて、勝っても負けても熱く応援してくれます。それは全国を見てもなかなかいないと思っています。その中で長くプレーできていることはありがたいの一言で、結果を出すことで応えたいといつも思ってプレーしています。
──昨シーズンは広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズとの激戦となった西地区を制し、B1昇格を決めました。
最終的には気持ちしかないと思います。自分たちも苦しんでやってきたシーズンでした。レギュラーシーズンは広島と熊本と競って、1敗するだけで順位が変動する状況が終盤まで続きました。昇格プレーオフも広島を相手に10分間の第3戦まで行きました。本当に最後の数秒まで分からない試合、やっぱり気持ちの勝負になります。広島も昇格したい気持ちは変わらなかったはずで、勝敗を分けたのはベンチまでみんな一丸となって戦えた気持ち、それしかないと思います。
「コート上の監督はポイントガードだと思っています」
──チームの陣容はガラリと変わりました。山本選手個人として開幕に向けた準備はいかがですか?
僕自身がまだまだレベルアップしなければいけないと感じています。それ以上にトップリーグでやるのは今までにない経験になるので、今までの自分のプレーがどこまで通じるのか分からない部分があります。そこは楽しみでもあり、もちろん不安もあります。そのためには選手やコーチが代わる中でも自分がしっかり成長していける環境を作る、自分自身がそこにアジャストしていくことが大事だと思っています。
僕はポイントガードとして、得点を取れるところが武器だと思っています。ただ、何よりもB1を戦うにあたってすべてがチャレンジなので、今までは何となくやっているプレーもあったのですが、鈴木裕紀さんにヘッドコーチが代わって、あらためてポイントガードがいかに重要なのかを学ばせてもらっています。
──指揮官交代で一番変わるのがポイントガードに求められるプレーだと思います。
そうですね。コート上の監督はポイントガードだと自分は思ってやっています。一つひとつのフォーメーションの指示を出すのはポイントガードです。コート上の監督としての自覚を持って、コーチの考えを理解してチームに伝えようと思います。ポイントガードとしての指示の出し方、チームをどう動かすかを今は一番考えてやっています。
コーチが代わるのは今回が初めてじゃなく、何度も経験しています。コーチの考えるバスケットが求められますが、結局はコート上の選手がどう理解して表現するかなので、その部分でチームを引っ張っていきたいと思います。
「自分が打つべき場面が来たらしっかり打って、決める」
──開幕に向けた感情を一言で表すと?
いやあ、もう全部です(笑)。楽しみもあれば不安もありますし、実際にその場に立てば緊張もするでしょうし、そのどれか一つを選ぶのは難しいです。でも、その全部を感じながら自分たちのバスケットを表現できれば大丈夫だと思います。なんせ島根にはB1経験がないので、そこはキミさん(佐藤公威)やジェイさん(波多野和也)が練習中に伝えてくれます。経験のある選手とない選手がうまく融合して練習に取り組めているので、そういう意味では手応えを感じているというか、開幕を楽しみにしている部分が強いです。
もう一つ楽しみなのは、これまでやったことのないチームとの対戦が多く、初めてプレーする会場が多いことです。栃木ブレックスさんだったり千葉ジェッツさんだったり、会場の雰囲気は場所によって全然違うと思うんです。それをトップリーグで感じながらプレーすることができるのは楽しみですね。
──旧NBL勢との対戦はほとんど初になるわけですが、特に対戦が楽しみな選手はいますか?
やっぱり同じポジションの選手、特に田臥(勇太)さんですね。ホームの開幕戦が栃木との対戦で、そこで田臥さんとマッチアップするのがすごく楽しみです。僕にとっては田臥さんが高校の時からずっと見ていて、雑誌で見ていただけですけど、遠い存在でありながら目指すべき選手でした。もちろん映像で見て学ぶこともできますが、実際に対戦することで分かることはたくさんあるはずです。それを肌で感じたいですね。
富樫(勇樹)選手もそうだし、他にもたくさん対戦したいポイントガードがたくさんいます。人それぞれプレースタイルは違いますが、盗めるところは盗んでやっていければいいと思います。
──昨シーズンはレギュラーシーズンの60試合中30試合で2桁得点。点の取れるポイントガードは世界では主流ですが日本では決して多くありません。点を取る秘訣は何ですか?
自分からガンガン点を取りに行くタイプだとは思っていません。試合の中で自分が打つべき場面が来たらしっかり打って、しっかり決めることを考えています。また、どうしても浮き沈みのある競技なので、チームが沈んでいる時に自分が得点する、それが自分の仕事だと思っています。
──島根を初めて見るファンもいると思います。「山本エドワードのここを見てくれ」というポイントを一つ教えてください。
やはり自分はシュートが得意なので、特に3ポイントシュートを狙える場面でボールを持ったら注目してもらいたいです。あとはコート内外関係なく声を出しているので、そこも見ていただければと思います。
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