本橋菜子

「マークが厳しくなっても、やるべきことは変わりません」

東京オリンピックでのメダル獲得を目指すバスケットボール女子日本代表は、Wリーグを中断して第11次強化合宿を行っている。

昨年から代表に定着したポイントガードの本橋菜子は、9月のアジアカップで『本橋タイム』と称される勝負どころでの大活躍で優勝に貢献、さらには大会MVPも獲得した。帰国後すぐにWリーグが開幕、そして今回の代表合宿と忙しい日々を送っている。

代表での活躍はインパクトが大きく、注目度も周囲の期待も飛躍的に高まっているが、本人はそれをプレッシャーとは感じていない。それでも「リーグの会場で『アジア大会MVP』と書いてくれている横断幕を見ると、身が引き締まる思いです」と、環境の変化が刺激になると話す。

「情けないプレーをしたら、私のプレーを楽しみにしているファンの方に申し訳ないです。毎試合来てくれるわけでもないですし、たった一回見に来てくれた時に、そういうプレーをしたら、がっかりさせてしまうので。そこは気を張って頑張らないとなと、あらためて感じています」

日本代表での活躍は、他チームからのマークが厳しくなることも意味する。それでも「マークが厳しくなっても、やるべきことは変わりません。良い判断をして、良いシュートセレクション、パス判断とかをできれば大丈夫」と、冷静にとらえている。

本橋菜子

「自分らしさをしっかり出して、やっていくことが一番」

合宿の紅白戦で本橋はAチームに入り、同じポジションの吉田亜沙美と交代でコートに立った。本橋は昨年が初めての代表入り。この時は吉田が代表活動を行っていなかったため、吉田とチームメートになるのは今回が初めてとなる。

「身近で練習をできることは、私自身としてもすごく勉強になることが多い」と本橋は言う。「パスの出し方や、一つひとつのフェイク、1プレー1プレーをすごく極めているなと感じます。吉田さんは、フォーメーション一つにしてもただ流すのではなくて、一つの動きに対してもパスを出すフェイクを入れたりしています。そういった細かいところを自分もやっていきたい」

吉田がオリンピック出場を目標に掲げて現役復帰したことで、ポイントガードの競争はこれまで以上に熾烈となった。今回の合宿メンバーは本橋と吉田、渡邉亜弥。また今回は休養の意味で招集されていないがリオ五輪を経験した町田瑠唯がおり、またケガの藤岡麻菜美の復帰も待たれる。それでも本橋は、「自分らしさを出してやるのが一番」と言い、気負う姿は一切ない。

本橋の言う『自分らしさ』とは何かと問うと、「攻め気かな」と笑顔で答えた。

「吉田さんや町田さんは、周りを生かすようなパスを出して、速いバスケットだったり、テンポを作ることができます。でも、私は自分が攻めることによってパスをさばくし、行ける時は自分で行って、チームに勢いを与えるのが仕事だと思っています。そこはブレずに、自分のチャンスは見逃さずに積極的にやっていきたいです」

日本代表は開催国枠でのオリンピック出場が決まっており、今回のプレクオリファイングトーナメントは勝ち負けよりもチームの成熟が問われる場。それでも本橋は「やるべきことをやって全力で勝ちに行きたい」と意気込みを語った。周囲の環境が激変してもブレない本橋は、吉田と一緒にプレーすることでまた新たな刺激を受けるはず。今大会でさらに成長して日本代表を引っ張っていく姿に注目だ。