文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE、鈴木栄一

終盤まで続く接戦、小さなミスが流れを変える

9月3日、アーリーカップ『関東』地区の決勝でアルバルク東京と千葉ジェッツが対戦した。序盤から僅差で推移するレギュラーシーズンのような激戦となったが、試合終盤の勝負どころで今日26歳の誕生日を迎えた田中大貴がビッグショットを決め、A東京が77-73で激戦を制した。

第1クォーターはともに相手の激しいディフェンスに苦しめられてシュートがなかなか決まらず14-14とロースコアの展開に。第2クォーターに入ると、ギャビン・エドワーズの豪快なダンクなどで千葉が突き放しにかかるも、A東京は安藤誓哉、正中岳城の外角シュートで応戦。前半を35-35と文字通りの互角で終えた。

第3クォーターもA東京がアレックス・カークのインサイドで加点すると、千葉はマイケル・パーカー、トニー・ガフニーらによるゴール下へのアタックで対抗。A東京の53対52と、互角のまま第4クォーターに突入する。

そして勝負の第4クォーター、A東京は馬場雄大、小島元基と若手の得点などによって残り約4分に68-63とリードを広げる。だが、千葉もここからこの試合20得点を挙げた富樫勇樹のレイアップなどで食い下がると、残り2分41秒、フリースローを2本決めれば同点となるチャンスを得る。しかし、ここで石井講祐が痛恨の2本連続で失敗。絶好のチャンスを逸する。

これで試合の流れが再び変わったか、A東京は田中の得点で4点差に。千葉もガフニーの得点ですぐに縮めるが、残り約1分、田中が値千金の3ポイントシュートを沈め、再び5点差に突き放したA東京がそのまま逃げ切った。

「負けたくない気持ちで我々のほうが強かった」

A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、「選手たちは非常にアグレッシブで、最後までよく戦ってくれました。レギュラーシーズンに向けて幸先の良いスタートを切ることができました」と、3日で3試合を戦うタフな大会を制した選手たちを称えた。

そして、「どちらに転んでもおかしくないゲームでした。勝ちたいという気持ちが両チームとも前面に出ていました。あえて勝敗の別れ目となるターミングポイントを挙げるとするならば、負けたくない気持ちで最終的に我々のほうが強かったと思います」と試合を振り返っている。

一方、本拠地で惜しくも勝利を逃した千葉の大野篤史ヘッドコーチは、「良いゲームだったと思います。選手にも伝えましたが、残り58秒でタイムアウトを取った後、3ポイントシュートを狙うように指示した自分に責任があります。あの場面では、2点を狙っていけば良かったと思います」と自身の判断ミスを悔やんだ。

ただ、効果的なプレーを見せた新戦力ガフニーについて「この3試合で、トニーの持っているものをしっかり把握できました」と話し、さらに「セットプレーはまだ使っていなかったですが、セットの前のベースとなるところの確認はできたのは良い収穫だと思います」と、開幕に向け実り多き大会だったと振り返っている。

まだ開幕まで1カ月近くあり、シーズン前哨戦と言えるかどうかも分からないアーリーカップ。しかし、参加したすべてのチームに、さらなる強化へ向け何かしら得るものがあった大会だったことは確かだ。