『Bリーグの時代』に実業団で奮闘する九州電力アーティサンズ、酒井祐典「『上のカテゴリーを食ってやろう』の気持ちで」

2017/09/07
Bリーグ&国内
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取材・写真=古後登志夫

九州電力アーティサンズは社会人バスケの強豪チーム。とはいえ、古豪ではない。全日本実業団選手権で初優勝したのが2007年。それでもこの10年間で優勝回数を5にまで伸ばし、オールジャパンに参戦することで全国のバスケットボールファンに知られるチームとなった。現在のチームを支えるのは酒井祐典。福岡大附属大濠ではキャプテンを務め、慶應大学時代はインカレ決勝に3度出場したスター選手だが、地元福岡の九州電力に就職してバスケを続ける道を選んだ。

高校時代は橋本竜馬と金丸晃輔(ともにシーホース三河)が、大学では二ノ宮康平(琉球ゴールデンキングス)が同期。ともに切磋琢磨したかつてのチームメートがBリーグの舞台でプレーしている今、実業団チームのエースとして酒井はどのような気持ちでバスケに向き合っているのだろうか。故郷でのバスケ人生を歩む酒井に話を聞いた。

兄と比べ続けられ「酒井祐典の人生を歩みたい」と

──福岡大附属大濠のOBとのことですが、年代的には誰と一緒でしたか?

橋本竜馬と金丸晃輔が一緒でした。後輩に久保田遼(茨城ロボッツ)がいます。国体では1度優勝していますが、大濠では全国3位が最高です。

──大学は慶應義塾大学に進みました。ここでは誰と一緒ですか?

1つ上の先輩に小林大祐(ライジングゼファーフクオカ)さんがいて、二ノ宮康平と岩下達郎が同期です。インカレで優勝1回、準優勝2回という実績です。

──九州電力に来た経緯を教えてください。当時のNBLやbjリーグに行く選択肢がなかったわけではないと思いますが……。

僕には実業団に行きたいという思いがあったので、話があっても耳に入れないでほしいと頼んでいました。僕は高校大学と兄(酒井泰滋)と同じ道を進み、いつも比べられる人生だったので、「酒井祐典の人生を歩みたい」と。それで兄と違う実業団を選びました。

──酒井泰滋選手はサンロッカーズ渋谷の前身である日立で長くプレーして、昨年に引退しました。比べられるのは嫌でしたか。

僕にとって兄はライバルでした。バスケも勉強もプライベートも、すべて比較されていたんです。それは今も変わらなくて、今も「人生で兄を超えてやろう」という一心で頑張っています。

──なるほど。それで故郷の福岡に戻って来たわけですね。

もう一つ個人的な理由ですが、親孝行をしたかったんです。私は3兄弟の末っ子ですが、上の2人は関東で就職をして、関東を拠点に生活しています。両親が2人きりになってしまうので、帰って来て面倒を見るのが自分の役目だと思いました。ただ、社会人になってもバスケのない生活は考えられなかったので、バスケと仕事を両立できる選択肢として九州電力を選んだんです。バスケで声が掛かっていたわけではなく、普通に就職活動をして入社しました。

「自分で選んだ道ですから、そこは貫き通します」

──九州電力ではどのような仕事をしているんですか?

今は人事をやっています。試合のために休みをいただくこともありますが、バスケでメシを食っているというわけではないので。仕事をしつつバスケを続けるというスタンスで受け入れていただいています。

──Bリーグができて、同じ年代の選手たちがプロとして活躍しています。「自分もプロで通用するんじゃないか」という気持ちが出てくるんじゃないかと思いますが……。

しょっちゅう思いますよ(笑)。特に代表で頑張っているのは高校や大学で対戦してきたメンバーばかりなので。私も一応、大学時代は日本代表に選んでもらって、合宿などでよく一緒になりました。その選手たちがトップレベルで活躍しているのを見ると「自分も行けたんじゃないか」と思いますね。でも、これも自分で選んだ道ですから、そこは貫き通します。

──仕事との両立は厳しい部分もあると思います。バスケに対するモチベーションはどう維持していますか。

正直、厳しい面もあります。やはりバスケ中心の生活ではなくなるので、その部分でモチベーションをどこに持っていくべきか、最初は悩みました。実業団だけにとどまっていいのか、それともカテゴリーを上げてB3を相手に頑張っていくのか。そこはチーム内でしっかりミーティングを重ねて共通理解をして。現時点に限っては『アマチュア最強』を目指すということで意思統一しています。そこに向かうにしても一人では無理なので、チーム一丸となってモチベーションを持って、お互い高めあっています。

「やれる限りはバスケット人生を謳歌したい」

──年齢的にはベテランの域に差し掛かってきました。続けられる秘訣は何ですか?

残りのバスケット人生が長くないことですね。この先、10年も20年も続けられるわけではないので、やれる限りはバスケット人生を謳歌したいです。だからこそ一日の練習を頑張って、やれるところまでやって「上のカテゴリーを食ってやろう」という気持ちでやっています。

──何度も実業団日本一になっていますが、九州電力が強いのはうまい選手が集まっているからでしょうか。あるいは先ほど話に出たモチベーションの高さが理由なのでしょうか。

前者ではないですね。うまいだけでは関東のチームには勝てないので。実業団と言えども、関東のチームは大学の第一線でやっていたメンバーが集まっています。そういったチームに勝ち続けるには、一人ひとりのモチベーションの持ちかただったり、共通認識だったりが大事で、ウチはその積み重ねに重きを置いています。うまいだけでは常勝チームにはなれません。それを知っているベテランがいて、実力のある若手がいる。その融合が強さの理由だと思います。

──Bリーグ効果で全国にバスケファンは増えていて、実業団バスケの注目度も上がると思います。九州電力に興味を持ったバスケファンへのメッセージをお願いします。

今はBリーグがすごく盛り上がっていますが、上のカテゴリーだけじゃなく実業団リーグもあって、そこで自分たちみたいな選手も頑張っています。そういったところから気にかけてもらって応援して、関東であったり九州であったり各地で試合をしているので、是非会場まで足を運んでもらえたらうれしいです。九州電力の応援をよろしくお願いします。