オフェンスの構築には懸念、ディフェンスは不安なし
昨シーズン、オールスター選手不在の中でプレーオフに進んだクリッパーズは、ファーストラウンドでウォリアーズに敗れましたが、そのチーム作りの成功がカワイ・レナードの関心を引くことになりました。さらにトレードでオールNBAファーストチームのポール・ジョージを獲得に成功。プレーオフチームに2人のトッププレイヤーが加わったことで、一気に優勝候補に浮上してきました。
しかし、エースクラスの加入は戦術的に大きな変化をもたらす上、オフシーズンに手術したポール・ジョージが開幕から欠場することが決まっており、チームの連携には不安が残ります。強豪ひしめく西カンファレンスを勝ち抜くには戦力の充実だけでは厳しく、優勝候補といえどもシーズン序盤は苦戦が予想されます。
クリッパーズがまず初めに調整しなければいけないのは、同じポジションに2人のエース級選手を抱えることによる役割分担の明確化です。ともにシュート力もあることからパスの受け手としても機能はしますが、昨シーズンはそれぞれがアイソレーション気味のプレーが多かっただけに、適切なフロアバランスを取った上でオフボールでのポジショニングが問われます。
さらにここに昨シーズンのクリッパーズでエース格だったルー・ウィリアムズも絡んできます。ボールを持って自分で仕掛けることで威力を発揮するタイプが3人揃うわけで、それぞれが主張しすぎても、譲り合いすぎても機能はしません。
ここは試合の中で試行錯誤を繰り返しながら連携を深めていくしかありませんが、クリッパーズは特に試合終盤の勝負どころで個人技に託すことが多く、誰をファーストオプションにするのか、他の2人にどんな役割を与えるかが注目されます。
相当な戦力アップになったことは間違いありませんが、役割分担と連携が確立されるまではチーム力が上がらないリスクがあります。ケガのマネジメント面も含めて、意外とオフェンスで苦戦するシーズン前半になりそうです。
チームオフェンスが噛み合うまでは苦労しそうですが、エースキラーとしてもヘルプディフェンダーとしても有能なレナードとジョージの揃い踏みは、ディフェンス面での劇的な改善を見込むことができます。同じくリーグトップクラスのディフェンダーであるパトリック・ベバリー、すべてのポジションを守る万能なモーリス・ハークレスと、強力なディフェンス能力を持つ選手が揃ったことで、チームとしての連携が深まっていなくてもそれぞれがマークマンを完封してしまうかもしれません。
クリッパーズが優勝候補に挙げられる最大の要因が、一気にリーグトップクラスになるであろうディフェンス力なのです。昨シーズンのディフェンスレーティングはリーグ19位と振るいませんでしたが、それでもプレーオフに進んでいるだけに、オフェンスの連携が進まなくても勝利を積み重ねてくるでしょう。オフェンス隆盛のNBAの流れを、クリッパーズが変える可能性すら秘めています。
攻守に隙がないだけでなく、モンテレズ・ハレルやランディ・シャメット、イビツァ・ズバッツといった若手も揃え、運動量を求められるトランジションが連続する展開にも対応できます。サラリーキャップ制限のあるNBAでは複数のスーパースターを獲得すると選手層が薄くなりがちですが、昨シーズンに作り上げた層の厚さにスーパースターを加えることで、見事なロスターバランスが実現しました。
クリス・ポールとブレイク・グリフィンを擁して毎シーズン期待されながら結果を残せなかった『ロブシティ』時代からわずか2シーズン。クリッパーズはメンバーを一新して優勝候補に戻ってきました。新シーズン最大の注目チームに躍り出た今、優勝だけを見据えています。
Welcome to the family, @kawhileonard. pic.twitter.com/yOEt4IKFm3
— LA Clippers (@LAClippers) October 11, 2019