『世界に通用する選手』を輩出するために
Bリーグが掲げる3つの使命のうちの一つに『世界に通用する選手やチームの輩出』がある。Bリーグが誕生したことで選手がバスケットに集中できる環境が整備され、代表活動も以前より活発になった。しかし、『現在』の日本を強くするだけでなく、その先の『未来』を見据えた強化もまた重要だ。大河正明チェアマンもそのことを感じており、「アンダーカテゴリーの再編は大事。各クラブに育成年代のチームを持つよう働きかけています」とアンダーカテゴリーの重要性を繰り返し語っている。
8月1日から3日に開催された「Bリーグ U-15 CHAMPIONSHIP 2017」はそうした理念が形になったもの。B1・B2に所属する15チームのユースチームが参加し、ファイティングイーグルス名古屋U-15が優勝した。
Bリーグが発足しユースチームを設立するクラブが増加したことで、育成年代の技術向上の場も増えた。だが『世界に通用する選手』を輩出するためには、まず世界との距離を知ることが重要だ。そんな中、アメリカのダラスで開催されたNBAマーベリックスのキャンプに6人の日本人選手の姿があった。仙台89ERSバスケットボールスクールの中学選抜クラスでプレーしている生徒たちだ。
バスケットだけでなく人間的な成長もうながす経験に
「実は仙台市とダラス市が友好都市という関係を結んでいまして、今年20周年ということもあって子供たちをバスケットボールキャンプに連れてくるという企画なんです」と仙台89ERSのマーケティング部長の岩本翔が教えてくれた。
中学生のうちに海外のキャンプに参加するという貴重な経験は、バスケットの上達だけでなく人間力の向上にもつながる。岩本部長は「バスケットもうまくなってほしいと思いますが、選手は全員が海外に来るのが初めてです。バスケットに限らず、今回のホームステイなどの体験を通じて、大きな視点を持っていろいろな経験をして育ってほしい」と、人間的な成長にも期待をしている。
英語でのレッスンで言葉を理解できない状況でも「みんながやっているのを見て、伝えたいことが分かってすごい勉強になるような練習でした」と参加者は目を輝かせた。
「相手のフィジカルが強かったけど、ドライブのミドルレーンは通用すると思いました」と、自信を手にした選手も。中でも一番の収穫はコミュニケーション能力の向上だ。「日本は知らない人同士で集まると静かになる。もっとみんなとコミュニケーションを取ってチームを盛り上げていきたい」と引っ込み思案な日本人の気質を変えることの重要性を身をもって理解した様子。
こうした活動を通し選手が成長することで、クラブの強化、そして日本バスケ界の底上げという好循環が生まれる。仙台はトップチームがB1復帰を目指すと同時に、U-15のユースチーム設立の準備も進めている。岩本部長は「明成高校が非常に強いということもあって、宮城県はバスケットが盛んなんです」と前置きした上で、「89ERSもU-15をはじめとした子どもたちの育成にも力を入れて、ゆくゆくは89ERSの選手になって活躍してほしい」と理想を語る。
ユースチームはまだ多くのチームがこれから設立するところ。どのような組織を作り、どのように運用していくかはまだ手探りの部分が多いが、仙台のように強い目的意識を持って取り組むプロクラブが日本各地に増えていくことは、今後の日本バスケットボール界にとっては大きなプラスとなるはずだ。