写真=Getty Images

予期しないタイミングでの鉄拳でメンタル強化!?

NBAでは、どういうわけかセンターやパワーフォワードの選手のフリースロー成功率が低い。特にビッグマンの成功率の低さは顕著で、試合終盤には対戦相手が故意にファウルを仕掛けてプレーを止める『ハック戦術』の犠牲になるのも、フリースローを苦手とするセンターの選手に多い。

改善に向けて努力を重ねるものの成功率が上がらないビッグマンが多い中、サンダーのスティーブン・アダムズは、1年目から徐々にではあるが成功率を改善させている。そして、昨シーズンはキャリアハイの61.1%を記録した。

フリースローに入るまでのルーティンの変更、フォームの変更など、改善させる方法は人ぞれぞれ。だが、アダムズの成功率を改善させた要因は、今の現代には相応しくないコーチの『鉄拳指導』にあった。

『Norman Transcript』によれば、サンダーのアシスタントコーチを務めるセルビア出身のダーコ・ラジャコビッチは、フリースローの練習中、突然アダムズのみぞおちにパンチを叩き込むのだという。しかも、いつ、どのタイミングで殴られるかアダムズ本人も分からないというのだから恐ろしい。

アダムズは昨年12月、ラジャコビッチとの練習について、笑顔を交えこう語っている。

「ダーコのおかげでフリースロー成功率が改善されている。彼は辛抱強く取り組んでくれるんだ。でもね、彼にみぞおちを殴られるんだよ。本当の話だよ。みぞおちを殴られるか、腕をかなり強く殴られる。それで一言『決めろ』と言われるんだ。それだけのストレスがかかるから、自分がやるべきことに集中しないといけない。もちろん楽しくなんてないさ。ちっちゃいセルビア人に殴られるんだぜ(笑)」

選手としての弱点を克服しつつあるアダムズは、出場時間もシーズンごとに伸ばしている。出場時間増は、フリースロー成功率の改善による恩恵の一つだ。

アダムズが試合終盤コートにいるのといないのとでは守備に与える影響は少なくない。しかし、『ハック戦術』の餌食になってしまってはチームの足を引っ張りかねない。だからこそフリースロー成功率の改善は重要なのだ。アダムズの能力を高く評価し、試合に与える影響力を分かっているからこそ、ラジャコビッチは鬼に徹しているのだろう。

現代では極めて珍しい方法だが、機能しており、アダムス自身も納得しているのだから今後も続くはず。今後サンダーに加わるビッグマンは、よほどフリースローを得意としない限りは、ラジャコビッチ流の指導を覚悟しておくべきだ。