取材=小永吉陽子 文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「ベンチメンバーにエネルギーがないのは良くない」

昨日開幕したアジアカップの初戦、日本代表は格下のフィリピンに危なげなく100点ゲームで勝利した。

指揮官のトム・ホーバスは、「前半はリバウンドで負けていてターンオーバーも少し多く、ウチのペースではなかったと思いますが、後半は良かったです。みんな落ち着いてプレーできた。ベンチメンバーにプレータイムが多くあったことも大事で、ベンチメンバーがよく頑張りました」と試合を振り返る。

今日は韓国戦、そして明日はオーストラリア戦と、ここから厳しい戦いになる状況で、主力を温存することができた。ケガ明けの髙田真希は出場せず、吉田亜沙美は試合開始からの5分半だけプレー。それが可能になったのも「ベンチメンバーがよく頑張った」成果だ。

第1クォーター後半、ホーバスHCは2桁のリードがあるにもかかわらずタイムアウトを取り、すでにコートに入っていたセカンドユニットの選手たちに檄を飛ばしている。その時のことを「怒っていました」と説明する。

「一番は気持ちで負けていたことです。ベンチメンバーにエネルギーがないのは良くない。そこは僕は厳しいです。ウチにはスタートに良いメンバーが揃っていますが、町田(瑠唯)も藤岡(麻菜美)も良い選手で、吉田よりちょっとは落ちるかもしれないけど、そんなには落ちないはずなんです。でもエネルギーの部分で落ちるのは良くない」

ここからベンチメンバーは強い気持ちでプレーし、持ち味を存分に発揮。ポイントガードでは3番手ながら23分半のプレータイムをもらった藤岡は、6得点10リバウンド10アシスト、リバウンドとアシストという珍しいダブル・ダブルを記録した。大﨑佑圭の控えである赤穂さくらは12得点10リバウンドのダブル・ダブル、馬瓜エブリンは3本の3ポイントシュートを含む21得点。リオ五輪の代表候補に選ばれながら最終選考で外れた3人が、今日の試合を引っ張った。

大﨑佑圭は「明日のゲームが一番のポイントになる」

今夜19時からは韓国戦。韓国はオーストラリアとの初戦を落としており、早くも崖っぷちに追い込まれている。日本としては、ここで勝っておけばオーストラリア戦を待たずして、ベスト16で強豪との対戦が避けられる見込みが立つ重要な試合。ホーバスHCは「相手は関係ない。自分たちがディフェンスから走ってペースを作り、相手にハートで負けないで、フィジカルでも強くプレーしたい」と語る。

韓国はこれまで何度も厳しい試合を戦ってきたライバル。大﨑佑圭は「明日のゲームが一番のポイントになると思います。外のバランスだったりリバウンドだったり。そこはどこのチームよりもやってきた自信があります。それを出せるように頑張りたいです」と意気込む。

フィリピン戦では12分半のプレータイムで11得点を挙げた長岡萌映子も気合十分。「一番の山場ですし、因縁の対決でもあると思うので、本当に気合い入れてやっていかないとつぶされちゃうので。誰が出ても日本らしいバスケットにして、オーストラリア戦につながる試合にしたいです」

また、フィリピン戦の大勝には、ベンチメンバーの活躍に加えてもう一つの『収穫』があった。「オフェンスもディフェンスも全部は見せていません。それは隠しました」とホーバスHCは語る。韓国は昨日オーストラリアと戦っており、こちらはすべて出し切らなければならない試合だった。「相手は関係ない」と言いながらも「その試合から良い勉強ができる」とホーバスHC。

フィリピンに快勝した後、ホーバスHCとコーチングスタッフには韓国戦までに相手を研究し、対策を立てるという『もう一つの戦い』がある。その成果がどんな形で表れるか、グループリーグ2戦目の韓国戦は今夜19時に試合開始となる。