文=丸山素行 写真=小永吉陽子

内と外とのバランスを改善することで逆襲を開始

U-19ワールドカップ、韓国から歴史的逆転勝利を挙げた日本は9位-12位決定戦に進み、ホスト国のエジプトと対戦した。

序盤は高さで上回るエジプトを相手にペイントエリアで失点を重ね、3ポイントラインから離れた場所から放つ3ポイントシュートを高確率で沈められてしまう。日本は増田啓介のレイアップ、 榎本新作のバスケット・カウントで反撃するも、第1クォーターで12-17とビハインドを背負った。

その後も相手の高さを気にしてインサイドにボールを入れられず、外のプレーに偏ってしまいオフェンスが機能しない。それでも安定したディフェンスで我慢の時間帯をしのぎ、5点ビハインドで前半を折り返した。

ハーフタイム、指揮官のトーステン・ロイブルは「塁(八村)も増田もシューターも外ばかりになってしまった。インサイドとアウトサイドでボールを動かせば良くなる」と選手たちに指示。この修正が効いて後半から日本が反撃を開始する。

ドライブでインサイドに切り込む意識が高まると、中と外のバランスが改善。ここまで不調だったキャプテンの三上侑希が、ミドルシュートとドライブから得点し流れを作る。残り3分30秒、水野幹太のドライブからノーマークを作り出し、杉本天昇の3ポイントシュートで42-41と逆転に成功した。

フリースローが入らず苦しむも集中力は切らさず

最終クォーターは追い付かれては突き放す一進一退の攻防に。それでも運動量が落ちることなく、集中したディフェンスを遂行する日本が優位を保って終盤を迎えた。だが、残り29秒から仕掛けられたファウルゲームで八村が1本目を落とし、続いては西田が2本ともミス。リバウンドから速攻を許し、土壇場で追い付かれてしまった。

迎えた延長戦、追い付いたエジプトに勢いがあるはずだったが、日本は最初のポゼッションでタフショットを打たせ、それを八村が豪快にブロック。日本は安定した堅守を披露し、精神的タフさを見せる。

互いに約3分間フィールドゴールが生まれない重い展開を破ったのは日本だった。ディフェンスリバウンドから速い展開を作り、アウトナンバーとなった三上が値千金の3ポイントシュートを沈める。さらに直後のポゼッションで守り切った日本は、一瞬の隙をついて増田が速攻を決め、残り1分42秒で70-64とリードを広げた。

フリースローの成功率が上がらない日本はセーフティーリードを保てず、残り6秒に3ポイントシュートを許し1点差まで追い上げられてしまう。それでも最後は八村が2本とも成功させて、76-73で逃げ切った。

ロイブルコーチ「日本にとって一大ニュース」

激闘を制した日本はベスト10以上が確定。ロイブルコーチは「誇りに思います。これだけの短い間で世界のトップ10になれたことは素晴らしいですし、日本にとって一大ニュースだと思います」と笑顔で話した。

キャプテンの三上は決して調子が良いわけではないが、1試合を通して集中を保ってチームに貢献。「ここまで来たら勝ちたかったので、気持ちでやれたと思ってます。アグレッシブにドライブして、キックアウトを繰り返してズレを作ることを意識しました」と語る。

サイズで劣るものの攻守ともに相手を上回った増田は、「相手のほうが体重もあって身体も大きいですけど、ペイントに入る前にバンプしたり、外からシュートフェイクして抜くとか、自分の勝てるところで勝負しようと思って、それができたと思います」と手応えを語った。

長かったワールドカップも明日が最終日。ベスト8進出はならなかったが、これまでのワールドカップ最高位を更新した。最終戦となる今夜のプエルトリコ戦に勝利し、有終の美を飾ってほしい。