
八村塁が見せた完璧な立ち上がりと引力
男子日本代表は『FIBAワールドカップ2027アジア地区予選』Window4の初戦でサウジアラビア代表と対戦し、106-78の快勝を収めた。
この試合で最もスポットライトを浴びたのは、前半のすべてのシュートを成功させて18得点を挙げ、最終的に29得点(フィールドゴール成功率78.6%)を記録した八村塁であることは間違いない。しかし、アウェーの地で28点差をつけ、ターンオーバーをわずか2に抑え込む完全勝利を収められた要因は、八村という突出した『個』を核にしつつも、チーム全員が連動して強みを発揮できたからだ。
試合後、桶谷大ヘッドコーチはチームの序盤の戦いをこう評した。「出だしからみんなのシュートが入って、トランジションのスコアで良いレイアップもありました。第2クォーターでリバウンドのギャンブルから簡単に走られたところを除けば、総じて自分たちが思い描いていたようなバスケットができたと思います」
八村とジョシュ・ホーキンソンの連携によって生み出されたオープンシュートは日本の大きな強みとなった。八村が29得点、ホーキンソンが21得点と、どちらかに偏ることなくオフェンスを遂行できた背景には、互いを高め合う関係性があった。 2人のコンビネーションについて問われた桶谷ヘッドコーチはその手応えを語る。「(八村がチームに合流してから)短い時間の中で、ジョシュも塁も、本当にお互いを信頼しながらバスケットをやってくれました。どちらかが空いたら、パスを回すことでお互いに良い形を作れました。2人ともディフェンスを引き付けられるので、ボールが回って、オープンシュートを打てるということは僕たちの武器だと思っています」
実際に相手ディフェンスが八村やホーキンソンへ警戒を強めれば強めるほど、アウトサイドで待ち構える西田優大や富永啓生、セカンドユニットの齋藤拓実らに絶好の機会が生まれた。西田が13得点、富永が14得点としっかりと射抜いたことで、サウジアラビアの守備陣は打つ手を失っていった。
八村は前半でシュートを一本も落とさず完璧なパフォーマンスを発揮したが、桶谷ヘッドコーチは周りの献身も評価する。「前半、シュートを落とさなかったのはパーフェクトと言うほかなく、完璧でした。彼の個人的なスキルはもちろんありますが、周りも彼に良いシュートを打たせようと、チームとして良い動きができていたんじゃないかと思います」
大差がついた第4クォーターにも八村はプレーした。桶谷ヘッドコーチは「点差が開いてチームのリズムを少し崩していたところがありました。次の試合へ向けたコンディションやゲーム感をつかませるためにも使いました」と言い、次戦を見据えた戦術的意図だったと明かした。
相手指揮官も「一つにまとまった素晴らしいチーム」と称賛せざるを得なかった。「ボックスワンやトラップなど様々な方法を試みました。八村選手はNBA選手であり、どんな力を持っているのか見せつけられました。日本が八村選手とその他の選手という形だったら話は別です。ですが、日本は一つにまとまった素晴らしいチームでした。ダブルチームを仕掛けても、それによってオープンとなった3ポイントシュートを許してしまったのがその典型です」
敵将が認めた通り、日本は決して『八村のワンマンチーム』ではなかった。コートに立っている時間帯の得失点差でゲームハイの+36をたたき出し、相手エースを封じ込めた馬場雄大のオフボールでの貢献。攻守の切り替えを支えた佐々木隆成やシェーファー アヴィ幸樹らのハードワーク。ベンチメンバーも含めた全員が自らの役割を全うしたからこそ、チーム全体で速攻による得点を29点まで積み上げ、ターンオーバーをわずか2に抑えるという驚異的なゲームコントロールが実現した。
ホーキンソンは「序盤に良い流れを作れましたが、後半にリードを縮められた場面もありました。次戦はスコアがどうであれ最後まで力強く戦い抜きたいです」と気を引き締める。強烈な『個』という核を持ちながら、それに依存することなくコート上の5人が連動してスペースを生み出し、全員で加点していく。個とチームの融合がスムーズに進んでいることを証明した一戦となった。