わずか1年での譲渡、『投機商品』となるNBAクラブ
ティンバーウルブズとWNBAリンクスの経営権が、マーク・ロアからマーク・スタッドへと移ることになった。ロアとアレックス・ロドリゲスによるグレン・テイラーからの買収が正式承認されたのは昨年のこと。わずか1年で、ロアは自身の保有株の大半をスタッドに譲渡する。
ロアとロドリゲスがオーナーの座を手にするまでの道のりは困難を極めた。2021年に結ばれた買収合意は、一括払いではなく分割払いでチームの株式を段階的に買い増していく仕組み。ロアとロドリゲスは資金調達の時間を必要としており、テイラーはその間もクラブを率いていたが、2024年3月にトラブルが起きる。支払いの不履行を理由にテイラーが買収は無効だと主張したのだ。
テイラーがゴネたのは、買収合意から支払い完了までの数年間で、NBAクラブの価値が急騰したことにある。NBA人気がワールドワイドに拡大し、巨額の放映権契約がまとまろうとしている中で、新型コロナウイルスの影響が色濃く残る中で結ばれたウルブズの買収額は低すぎるものとなっていた。結局、仲裁委員会がテイラーの主張を退け、昨年のNBA理事会による承認を受けてクラブ買収が正式に完了した。
それだけのゴタゴタを乗り越えて手に入れたウルブズを、ロアはもう手放す。その理由は自身が手掛ける食品宅配事業『ワンダー』の新規株式公開を進めるためだと報じられている。彼はオンライン通販事業をamazonに売却して資金を作り、ウォルマートの通販事業のトップを務めた。今の本業は食品宅配事業で、ウルブズの経営から退いてここに注力するという。
2021年に15億ドル(約2300億円)で買収合意したウルブズを45億ドル(約6800億円)で売却する。すさまじい『錬金術』だが、ロアはその金額を上回る売却オファーを断り、現在好調なウルブズの方向性を継続するオーナーとしてスタッドを選んだという。
新オーナーとなるスタッドは、投資会社『ドラゴニア・インベストメント・グループ』の創業者。ロアとロドリゲスが経営権を握った2025年以降、チームの運営に目立たない形ながらかかわってきた少数株主で、今回のオーナー交代は『内部昇格』となる。ロドリゲスは共同オーナーとして影響力を保ったまま残留する一方、ロアはガバナーを退任して少数株主となる。
もっとも、こうした短期間での経営権の移動には批判も付きまとう。ウォリアーズのオーナー、ジョー・ラコブはかつて「これは家の転売とは違う」と反論したが、実態はそれに近いとの見方は根強い。長年にわたり一族や個人がチームを保有し続けてきたNBAの伝統的なオーナーシップは、評価額の高騰を背景に保有者が短期間で入れ替える投機商品へと姿を変えつつある。
チーム運営面では、当面は継続路線が敷かれる見通しだ。アンソニー・エドワーズ、ラメロ・ボール、ルディ・ゴベア、ジェイデン・マクダニエルズら主力の陣容に変化はなく、フロントの体制もそのまま維持される公算が大きい。好調なリンクスも含め、今の成功をそのまま引き継ぐことこそが、スタッドに求められる最初の役割となりそうだ。
