
エースには物足りず、2番手や3番手には年俸が高すぎる
マイケル・ポーターJr.は昨年夏、キャメロン・ジョンソンとのトレードでナゲッツからネッツへ移籍した。サラリーキャップに余裕のないナゲッツは、年俸3800万ドル(約57億円)のポーターJr.から2100万ドル(約32億円)へのジョンソンへの切り替えを行うしかなく、ポーターJr.は優勝候補から再建チームへと活躍の場を移した。
キャリア初の移籍を経験したシーズン、スタッツ上では上々の成果を残した。24.2得点、7.1リバウンド、3.0アシストはいずれもキャリアハイ。しかし、フィールドゴール成功率は50.4%から46.3%に、3ポイントシュート成功率は39.5%から36.3%に落ちている。ヨキッチの作り出すチャンスを『決めるだけ』だったのが、ネッツでは独力でディフェンスをこじ開けなければならず、効率は低下した。そして何よりチームは20勝62敗と低迷した。
ポーターJr.は現在28歳で、2021年オフにナゲッツと結んだ5年1億7200万ドル(260億円)の契約最終年を残すのみ。キャリアの全盛期を迎えようという年齢でエースとして数字は残したが、実際には崖っぷちに立たされている。
問題は、彼の適性と契約規模の間にある根本的なミスマッチだ。ネッツでキャリアハイの数字を残したことで得点力は証明されたが、自らドリブルでズレを作るハンドリングや、ダブルチームを崩すパスの視野には課題があり、マークが厳しくなるとタフショットが増えて効率が落ちる。
デビューから昨年夏まで『誰かが作ったチャンスを高確率で決める』仕事を求められ、それに特化したプレースタイルを作ってきたのだから当然だろう。しかし、2番手や3番手で輝く選手に年俸4000万ドル(約60億円)は、今のNBAでは高すぎる。上位争いを演じるチームはどこも、そんな余裕は持ち合わせていない。
MPJ tonight in Toronto:
— Brooklyn Nets (@BrooklynNets) October 18, 2025
🎯 34 PTS
🎯 12-20 FG
🎯 6 3PM
🎯 10 REB
🎯 3 AST pic.twitter.com/5RyMNTcJF1
契約延長のタイミングではあるが、ネッツとの合意は見送られる可能性が高い。ポーターJr.はキャリアハイを記録したエースに見合う大型契約を求めているが、再建4年目に突入するネッツはサラリーキャップの柔軟性を最優先としている。来年2月のトレードデッドラインまでにポーターJr.の価値を最大化し、再建のための資産とトレードするのがネッツの狙いだろう。
ポーターJr.としても、再建に目処の立たないネッツで長くプレーするつもりはないはずだ。ただ、トレードは自分にはコントロールできず、最善のシナリオが成立するのを待つしかない。
彼にとっての最善は、『優勝のラストピース』として強豪に迎え入れられることだ。例えば今年2月にも噂になったウォリアーズでステフィン・カリーと新たな『スプラッシュ・ブラザーズ』を結成すること、あるいはバム・アデバヨとヤニス・アデトクンボのキックアウトから次々とシュートを打てるヒートへの移籍は、ポーターJr.にとって再び優勝争いの主役を演じるチャンスとなる。ただし、すでに複数のスターを抱えるチームと大型契約を結ぶのはそう簡単ではない。
あるいはピストンズやマジックといった、プレーオフ進出チームではあるがシュート力とサイズを欠く中堅チームの移籍こそが最善かもしれない。ピストンズはケイド・カニングハムに次ぐ得点源を必要としており、何より3ポイントシュートが足りない。まだキャップスペースを残す上に、ここまで難航しているジェイレン・デューレンとの契約延長交渉が穏便にまとまれば、さらに余裕が生まれる。プレーオフでの勝負強さも証明済みのポーターJr.はフィットするはずだ。同じくマジックも3ポイントシュートが足りないし、ビッグラインナップで戦うチームの方針にも合う。両チームとも競争の激化する東カンファレンスで『現状維持』は許されず、ポーターJr.に賭ける意味は決して小さくないはずだ。
逆に、ポーターJr.にとって最悪のシナリオは何だろうか? それはキャム・トーマスの再現だろう。ネッツが売り時を見いだせないうちにハムストリングのケガの慢性化で評価を下げ、最終的にはウェイブされた。バックスと契約したものの、ケガ人による戦力不足を短期間埋めただけで再び解雇となった。
『価値ある資産』と見なされる選手でも、適性と契約規模のミスマッチにハマるとキャリアは暗転する。ポーターJr.がそうならないためには、まずは自分のベストを尽くし、トレードが良い形でまとまるのを待つしかない。