「若手に25得点されて言い返せないのは絶対に嫌だ」

8月に入ってすぐ、サンズと3年7300万ドル(約110億円)の契約延長に合意したディロン・ブルックスが休暇を過ごしていたトロントからフェニックスに戻り、会見を行った。「フロントとはじっくり話し合った。彼らが長期的なプランを示し、僕自身もここで長くプレーしたいと願った。どんな条件であれ残留するつもりだった」と、2030年まで契約が保証されたことを喜んだ。

若くて野心的なチームらしく、サンズの選手たちはオフの多くをフェニックスで過ごし、サンズの練習施設でバスケ漬けの日々を送っている。「良いスタンダードができていると思う。選手であれば毎週、毎月、何かしら成長していくべきだからね。シーズンをともに戦う仲間と過ごすことでケミストリーが生まれ、それがチームを底上げしてくれる」

キャリアを通じて相手のエースを抑えるディフェンスと、時に行きすぎて退場になる荒っぽい姿から『ヴィラン』(悪役)とされ、彼自身もそれを演じてきたが、NBAキャリア10年目を迎えようとする今は決して小さくない変化がある。『ヴィラン』のまま、チームリーダーとして若手を引っ張る姿を前面に押し出すようになった。

「10年後に自分がチームのカルチャーを変えるリーダーとして記憶されているかもしれない」と言われたブルックスは「そうなっても驚かないよ。『ヴィラン』がリーダーになれるとは思っていなかったけど、どうにか形にすることができた。それぞれの選手が学び、成長するために、どんなスイッチを押せばいいかをずっと考えてきた結果だ。まだ完璧じゃないけど、自分なりにやれるようになってきたと思う」と苦笑混じりで答えた。

ブルックスは2017年の2巡目45位指名で、決して注目されてNBAに入って来たわけではない。同期の1位指名マーケル・フルツはもうNBAにいないし、2巡目指名となるとトーマス・ブライアント(42位指名)、アイザイア・ハーテンシュタイン(43位指名)など数人しか残っていない。ハードワークと勝利への強い意欲が、NBAという過酷な世界でブルックスが生き残る手段だった。

「1年ずつ、着実に歩んできたと思う。最初の目標は先発の座を勝ち取ること。その後もコーチの交代など様々な変化がある中で、先発を守り続けようと努力してきた。でも今の目標は優勝することだけ。10年目となれば、最初から素晴らしいチームやスーパースターと一緒にいられるものじゃないことは理解できる。地道に這い上がるんだ。今の僕は優勝することと、この17人のメンバーでどうやってそれを成し遂げるかだけを考えている」

グリズリーズ時代に結んだ4年8600万ドル(約130億円)を上回る大型契約を手にしても、ハングリー精神に変わりはないとブルックスは言う。「7300万ドルという契約は僕が優れた選手である証になるけど、僕を突き動かすのはNBAでプレーする栄誉であり、チャンピオンリングだ。NBAに入った頃から、大金を得たことで満足してしまい、成長が頭打ちになる選手をたくさん見てきた。でも、長年ここでプレーしていれば、若いタレントが次々と現れ、リーグのレベルが上がり続けていることが分かる。1年でも努力を怠れば、そのお金は別の誰かに奪われる。それが僕のモチベーションだ。若手に25得点されて言い返せないヤツになるのは絶対に嫌だ。そう考えれば、努力することをやめる理由はないよね」