
活躍しても『トレードの便利な駒』の評価は変わらず
キャバリアーズはデニス・シュルーダーに金銭を付け足し、トレ・マンを獲得するトレードをまとめた。シュルーダーはNBAキャリア13年の間に9回トレードされ、14年目の開幕を12チーム目のホーネッツで迎えることとなる。
ドイツ代表では絶対的な司令塔である彼が、なぜNBAではどこにも定着できずに移籍を繰り返すジャーニーマンになってしまうのか。そのきっかけはレイカーズで過ごしたキャリア8年目にあった。
ドイツ代表ではチームの完全なファーストオプションであり、自分の判断でプレーを作り出すことができる。当然、自分のスピードやスキルを最大限に活用し、自らのプレーからドイツのオフェンスを作り出す。しかし、NBAではそうはいかない。特に当時のレイカーズではレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスが彼より優先されるオプションだったし、レブロンは勝負どころで自分がハンドラーとなり、シュルーダーはコーナーに追いやられた。
レイカーズでの1年目を終えた2021年オフ、シュルーダーは4年8400万ドル(約130億円)の契約延長オファーを蹴った。NBAで主役を演じるにはサイズとシュート力が不足している現状を彼自身は乗り越えるつもりだったが、世の中からは『市場価値を客観視できない選手』というレッテルを貼られてしまった。この時にセルティックスが提示した1年590万ドル(約9億円)を受け入れたことで、それ以後は『トレードの便利な駒』として移籍を繰り返すようになった。
今回も、キャブズはシュルーダーの実力そのものを否定したわけではないが、実力以上に『トレードの便利な駒』と見なした。シュルーダーとマンの年俸差となる約680万ドル(約10億円)のキャップスペースを、ジェームズ・ハーデンとの再契約、そしてペイトン・ワトソンやジョナサン・クミンガの獲得資金にあてる狙いだ。
シュルーダーがジャーニーマンの立場に甘んじるはずはなく、「今回こそ」の思いは強いに違いない。ホーネッツは絶対的な司令塔だったラメロ・ボールを放出し、先発ポイントガードをコービー・ホワイトに託す。その控えはマンと2年目のシオン・ジェームズ、ルーキーのクリスチャン・アンダーソンが担うはずだったが、実績という面であまりにも心許ない。そこでシュルーダーに白羽の矢が立った。
ホーネッツにとって今回のトレードはシュルーダーの選手としての特性、人柄を知った上での獲得だ。ジェフ・ピーターソンGMも指揮官チャールズ・リーも、シュルーダーがNBAで最初の5年間を過ごしたホークスで一緒だった。速いテンポで3ポイントシュートを多用するチームのスタイルにシュルーダーはフィットするし、『扱いづらい選手』という懸念もシュルーダーを熟知している彼らはコントロールできると考えたのだろう。
ヘッドコーチのチャールズ・リーは、2014年にホークスのアシスタントコーチとしてNBAにやって来た。シュルーダーはルーキーイヤーを終えたところ。シュートフォームの改善や朝晩のワークアウトをサポートしたのがリーで、その結果として2年目にシュルーダーはローテーションに定着し、NBAでの成功を勝ち取ることになる。両者の関係性があったからこそ、今回のトレードがあったと見るべきだろう。
来月に33歳。移籍を繰り返す中ですっかりベテランとなったシュルーダーだが、ポイントガードとして自分の力をあらためて示すとともに、若いチームを引っ張るリーダーシップも求められる環境で、本領発揮といきたいところだ。