ディロン・ブルックス

自分を信じた球団への感謝を『お手頃な年俸』で示す

ディロン・ブルックスはサンズと3年7300万ドル(約110億円)の契約延長に合意した。NBAキャリア9年目となった昨シーズン、ケビン・デュラントを放出するトレードによりロケッツから加入したブルックスは、エースのデビン・ブッカーと同じくロケッツから移籍して来たジェイレン・グリーンを守備で支えるはずだった。ところがグリーンがケガに苦しむ中、ブルックスはオフェンス面でステップアップ。キャリアハイの20.2得点を記録し、期待以上の成果を残した。

自ら『悪役』を任じるブルックスらしく、荒っぽさも同居する。56試合の出場に留まったにもかかわらずテクニカルファウル17はリーグ最多。それでもプレーインを経て迎えたプレーオフのファーストラウンドで、チームはサンダーにスウィープ負けを喫したものの、彼は26.0得点、6.0リバウンドとレギュラーシーズンから大きくスタッツを伸ばし、強烈な存在感を放った。

『悪役』のイメージが強いが、バスケに取り組むひたむきな姿勢でキャリアを作り上げてきたのも事実だ。プレーオフで敗退した翌朝から個人ワークアウトを開始するなど、成長への意欲は人一倍強く、コート上で見せる闘争心と合わせてチームの若手にとって素晴らしいお手本となる。

「満足できるシーズンを送った今だからこそ、この勢いを失いたくない」と、ブルックスは敗退翌日の会見で語っている。「僕はここまで努力を積み重ねてきて、その習慣を止めたくない。バスケ選手の寿命は短いけど、まだ10年ぐらいはプレーし続けたい。自分の道は自分で切り開く。そのための努力は惜しまない」

2017年の2巡目45位指名でグリズリーズでデビューしたブルックスは、3年目のシーズンを終えたところで3年3500万ドル(約52億円)、その3年後には4年8600万ドル(約130億円)の契約を結ぶとともに、サイン&トレードでロケッツに移籍した。その契約を1年残した今オフに新たな3年契約を結び、2030年まで契約が保証される。

来シーズンの年俸は2100万ドル(約32億円)で、今回新たに結んだ契約での年俸は微増に留まる。大活躍したシーズンの直後に大きな昇給にならなかったのは、サラリーキャップの縛りが非常に厳しい中で、ブルックスがサンズに寄り添ったと見ていいだろう。

それは、フロントやコーチングスタッフへの信頼があってこそだ。昨シーズン中、デマーカス・カズンズがブルックスをレイカーズにトレードする案をSNSで出した際、サンズのオーナー、マット・イシュビアは「無駄だ。サンズはこのトレードに興味がない」とわざわざ投稿している。ヘッドコーチのジョーダン・オットは、一般的には『守備専任』と評価されるブルックスのシュート力を認め、『グリーンライト』(自分の判断でシュートを打つ許可)を与えた。「毎日シュートを打ち続けている姿をコーチは見ていたんだと思う。感謝しかないよ」とブルックスは語っている。

ブライアン・グレゴリーをGMに迎えて『スーパーチーム路線』からの脱却を進めるサンズは、1年で年齢とサラリーのバランスの取れたロスターを作り上げた。ブッカー以外に真のスター選手はおらず、ネームバリュー的な物足りなさはあるものの、昨シーズンの成長をこのまま継続できれば、西カンファレンスに波乱を巻き起こすチームになれそうだ。