
得点力はいまだ健在でも、市場の反応は冷ややか
デマー・デローザンは、「あらゆる得点、あらゆる大舞台、そしてサクラメントを背負ってくれたすべての瞬間に感謝する」という別れのメッセージとともにキングスから解雇された。デローザン自身、トレードでの決着が長引くよりも早く自由の身になることを望んでのウェイブだったが、その先に待っていたのは想像より厳しい市場の反応だった。
今オフに37歳となる今も、彼はNBA屈指のスコアラーだが、本人が望むとされる800万ドル(約12億円)から1200万ドル(約18億円)の契約はいまだまとまらない。
今オフはレブロン・ジェームズの決断待ちで市場全体が停滞した。レブロンがようやくセブンティシクサーズ行きを決断したが、『プランB』へと切り替えるチームはいまだ停滞している。キャバリアーズではジェームズ・ハーデンがペイトン・ワトソンやジョナサン・クミンガとの交渉にフロントが専念できるよう、あえて自身の再契約を後回しにしている。こうした連鎖がデローザンの交渉にも影を落とした。
より本質的な問題は、同じベテランスコアラーでも評価がまるで違う点にある。ハーデンは2025-26シーズンに平均23.6得点、8.0アシスト、3ポイント成功率37.5%を記録し、単年の年俸は落とすものの複数年での契約延長が視野に入る。一方のデローザンは、キャリアを通じてミッドレンジからの得点を武器にしてきた選手で、3ポイントシュートを武器としていない。3ポイントシュートを打たなくても得点は取れるのだが、スペーシングを広げられず、ドライブを得意とするエースのサポートができない懸念から、優勝を狙えるチームほど彼の獲得には二の足を踏む。
彼自身、不本意な形でデビューから9年間を過ごしたラプターズを離れた後、スパーズ、ブルズ、キングスと優勝争いとは無縁のチームで過ごし、その後の8シーズンでプレーオフに進出したのは2度だけ。キャリアの終焉が見えてきた今、お金の問題ではなく『勝つために』プレーできる環境を望んでいるが、それがなかなか決まらない。
もう一つ、彼としては譲れないラインもある。もはやエースではなく、2番手や3番手、ベンチからの得点源も受け入れる覚悟はあるが、それでも戦力として正当な評価とリスペクトを得ること。ベテラン最低保証額の選手は、その評価を得られないケースがほとんどで、チーム内での序列が低ければ低いほどチーム事情に振り回されることになる。ただ、彼自身が『トレードではなくウェイブ』という形でフリーエージェントになったことが、印象を悪くしている。
新シーズンだけを考えれば、実績に乏しいワトソンやクミンガよりデローザンのほうが優勝に貢献できる選手と言えるだろうが、『勝てない選手』のレッテルも今オフの彼のチーム探しの足を引っ張っている。
現状、有力候補とされるのはヒート、キャブズ、ナゲッツ、ウィザーズ、そして古巣のラプターズだ。ヒートは新加入のヤニス・アデトクンボとバム・アデバヨを軸にしたチーム作りの中でシュート力を必要としており、キャブズは東カンファレンスファイナル進出の実績を踏まえてウイングの得点力を欲している。ナゲッツはすでにセカンドエプロンに達しており、提示できるのは最低保証額のみだ。
平均18.4得点を記録し、歴代でも指折りの得点を積み上げてきた選手が、それでもミニマム契約すれすれの争奪戦を強いられる。デローザンが直面しているのは、実力だけでは正当に評価されない現代NBAという厳しい現実そのものだ。