山内盛久

サンロッカーズ渋谷でプレーした山内盛久は、10年ぶりに古巣の琉球ゴールデンキングスへと戻ってきた。現在の琉球は、国内随一の屋内スポーツ観戦施設である沖縄アリーナを本拠地とし、山内が前回在籍していた2017年からリーグ屈指のビッグクラブへと進化を遂げた。だが、その中でもクラブは創業時からのカルチャーを大切しており、山内は唯一の沖縄県出身選手かつ創業時を知るメンバーとして、歴史を伝える担い手として大きな覚悟を持っている。

「若い世代にキングスでプレーする意味を伝えていく」

──今シーズンのロスターの印象をお願いします。

どこからでも点が取れますし、リバウンドなど総合的にもすごくバランスの良いチームです。ただ、コーチが新しくなり、軸になる選手たちにも新加入が多くなるので、まだまだチームとして若いです。各選手がそれぞれアジャストして、チームとしてうまく一つになれるかは不安要素です。いろいろなチームを渡り歩いた経験から、タレントのある選手たちが多いからといって勝てるリーグではなくなってきているのは分かっています。いかに共通認識を持って、自分たちのやりたいバスケットを遂行できるか。そこがしっかりしていれば、どんなチームにも勝てる。あとは全員が大きなケガなく戦えたら、自分たちの目指す位置までしっかり到達できると思います。

──新戦力で、三遠ネオフェニックス時代の同僚の大浦颯太選手、デイビッド・ヌワバ選手はどんなキャラクターか教えてください。

デイビッドに関してはあまり口数が多いタイプではないので、自分がチームに溶け込めるように雰囲気作りができたらいいなと思います。颯太は顔見知りのメンバーもいますし、物怖じする感じでもないです。2人に限らず、選手たちのコミュニケーションは問題ないと思っていますが、コーチと選手で意思の疎通がうまく行くように、自分が彼らを繋ぐ役割を担っていきたい。そういった意味もあって、例年より早い時期からワークアウトをして、コーチやいろいろなスタッフと顔合わせをしてきました。

──クラブのSNSでは、佐取龍之介選手、宮里俊佑選手といったチームの未来を担う十代の若手と一緒にトレーニングをしている姿が紹介されていました。彼らにキングスのカルチャーを伝えていきたいという思いはありますか。

そこに関する思いは強いですし、そういったところをクラブから求められているとも感じます。若い世代と一緒にバスケットをする中で、キングスでプレーする意味、沖縄を代表してプレーする意味は伝えていかないといけないです。

──三遠、サンロッカーズ渋谷時代は単身赴任だったと聞いています。沖縄で家族と一緒に暮らしながらバスケットができることはメンタル的にもやはり違いますか。

みんなには「良かったね」と言っていただけています。ただ、これまでは家族と一緒に過ごす時間をチームメートとコミュニケーションを取る時間にあてて、チームビルディングに貢献できていたところもあるので、妻には沖縄に帰るタイミングで「家族の時間はしっかり取るけど、シーズンが始まったらチームメートとの時間が増えるからそこは理解してほしい」と伝えました。「それがあなたの良さであるし、それでチームがうまくいくならどんどんやってください」と言われたので、自分でうまく調整しながらやっていきたいです。

──今シーズンの開幕戦は、10年前のBリーグ開幕戦時と同じアルバルク東京とのアウェーゲームです。新たな節目を再び琉球の一員として迎えることに感慨はありますか。

めちゃくちゃエモいですね。メディアの露出がどんどん増えて、バスケットの注目度が高まっていく中で迎えた当時の開幕戦は「たまたま自分もプレーできた。よっしゃ!」みたいな感覚でした。そこから1年後、26歳の時にキングスを出ることになったわけですが、今振り返ると良い経験になりました。あの時の経験をありがたいことに今、新しいフォーマットでスタートを切る時にキングスに還元できる。この節目のシーズンに10年前と同じカーディングで開幕を迎えられるのは、自分としてもありがたいですし、ワクワクしています。

山内盛久

「キングスから出て、外の世界を知ることで成長できた」

──琉球を出たからこそ得られたモノとは何ですか。

いろいろな視点を持ち、考えられるようになったと思います。(契約満了となった)26歳の時、当時の木村達郎社長から「別にプレーさせたくないわけではないけど、盛久には外の世界を見てほしい。考えた方だったり、バスケット観を外に出ることでもっと膨らませてほしい」と話してもらいました。当時は若かったので「それって言い訳でしょ」くらいにしか感じていませんでしたが、今はこの言葉の意味がすごくよく分かりますし、木村社長の判断に感謝しています。キングスを出て良かったと思えるくらい成長できたと感じています。

──ホームが3500人で満員の体育館から8000人を超えるアリーナとなり、クラブの規模もまったく変わりました。そういった変化は、久しぶりに戻って感じますか。

すごく感じるので、「帰ってきた」という感覚はあまりなくて、「地元のビッグクラブに自分が新たに加入する」という感じのほうが強いです。在籍当時一緒だったメンバーもいるので、昔の話をしたりして懐かしさを感じることもありますが、クラブが大きくなったことに喜びがあります。ただ、昔の厳しい環境の中で練習してきた土台があるから、今のチームがあります。この土台の部分こそがキングスらしさだと思っているので、若い選手たちにはこの環境が当たり前ではないことを伝えたいです。

──岸本選手が移籍し、ウチナーンチュ(沖縄県人)のプロ契約選手は山内選手のみになりました。ここは意識せざるを得ないですか。

プレッシャー、責任はすごく感じています。でも自分1人でどうこうしようとは思っていないです。このクラブには本当に沖縄のことが好きなスタッフ、選手が集まってくれています。彼らを巻き込んで一緒に、キングスをもっと良いクラブにしていきたい。その中で地元選手だからこそ、創設当時のキングスの知っているからこそ伝えられるモノがある。これまで積み上げてきたカルチャーを継承していく役割を、自分が担わないといけないことは理解しています。そういった部分でも今シーズンは、自分にとっても新しいチャレンジとなります。

──最後に琉球ファンへのメッセージをお願いします。

昔ほど上手くプレーできたりする存在ではないかもしれないですけど、1人のウチナーンチュとしてキングスを沖縄の皆さんが誇りに思えるチームにしていきたいです。そのために大切なことを最年長の選手として、チームメートに伝えていく。皆さんに「応援してよかった」「キングスって良いね」と感じてもらえるように、みんなとしっかり手を取り合ってやっていきます。