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迷走の元凶の一人とまで批判されたジャクソンと決別

6月28日の早朝、ニックスは球団社長のフィル・ジャクソン退任を発表した。

表向きは退任という表現だが、チーム内のゴタゴタを解消させる方法として球団が選択したのは、ジャクソンの事実上の解任だった。

昨シーズンのニックスは、ジャクソンが現場介入を始めた頃から風向きが怪しくなり始めた。ブルズとレイカーズ指揮官時代にスリーピート(3連覇)を達成したシステム『トライアングル・オフェンス』の導入を指揮官ジェフ・ホーナセックに強要し、自ら練習場で指導したこともあったと報じられた。

また、カーメロ・アンソニーの去就問題についても、トライアングル・オフェンスに適さないという理由から戦力外扱いとしてトレードを模索し始め、それをメディアの前で公言したことで選手たちの反感を買った。中でもニックスの将来を担うとされるクリスタプス・ポルジンギスは、面倒見の良い兄貴分であるカーメロを侮辱されて怒り心頭。結果、ポルジンギスは昨シーズン終了後のチームミーティングを欠席して帰国、そのままオフに入るという行動に出た。

この行動を快く思わなかったジャクソンは、今度はポルジンギスのトレードも検討していると話し、両者の対立は泥沼化しつつあった。

もはや誰の目から見ても上層部の介入が必要な状況、ニックスはポルジンギスが必要という判断を下した。『New York Post』によれば、ジャクソンの退任が報じられてから15分後、ポルジンギスは今年のドラフト全体8位でニックスが指名した、フランス出身のフランク・ニリキナのInstagramアカウントをフォローしたそうだ。

ニリキナは196cmと上背のあるポイントガードで、身体能力と敏捷性に優れている。まだ19歳ながらも年齢以上の成熟度を備え、ウィングスパンも210cmを超えている。線の細さが弱点になり得るが、それは今後のトレーニングでカバーできる部分で、数年後が楽しみな存在だ。

ジャクソンの退団により、退団が決定的とされていたアンソニーの状況も変わるだろう。アンソニーの契約にはトレード拒否条項が含まれ、本人もニックス残留を希望している。ジャクソンの後任が誰になるかで話は変わるかもしれないが、いまだNBAトップクラスのスコアラーなのは間違いない。

フリーエージェントになるデリック・ローズの去就は不透明ではあるものの、ニックスは来シーズンもアンソニーとポルジンギスのデュオを中心にチーム作りを進めていくことになりそうだ。

ジャクソンの退任により、ひとまずチームは落ち着きを取り戻すはず。ジャクソン在任中と比べれば、大物フリーエージェント選手を獲得できる希望も出てきた。混乱を脱したニックスが次にどう動くか、今後の展開に注目したい。