写真=野口岳彦

「社長が泣いたのに俺が泣かなくてすいません」

6月27日、栃木ブレックスは渡邉裕規の引退を発表した。

渡邊とともに引退会見に登壇した栃木の鎌田眞吾代表は「チームとしては残って選手を続けてほしかったですが、本人の意向を汲んで引退することになりました」と発表。また4年前に渡邊が栃木に来た頃を振り返ると、こみ上げる涙に言葉を詰まらせた。

逆に、決断を下した渡邊はすっきりした表情で「今シーズンをもちまして引退をします」とよどみなく話す。「初代王者まで昇り詰める素晴らしい経験をすることができました。ファンの方にブレックスアリーナだったり、代々木体育館であのような素晴らしい光景を見せていただいたというのは、僕のバスケットボール人生の中で誇れるものであり、素晴らしい思い出となりました。4年という間でしたが本当に感謝しています。ありがとうございました」

引退については、初代王者となり燃え尽きたわけではなく、以前から引退を考えていたことだと説明。「きっかけは特にないですけど、強いて言うなら、パナソニックトライアンズの3年間でチームがなくなったということは大きいですね。栃木から話をいただいたタイミングでいろんなことを考える期間があって、そのタイミングが大きいです」

「体力の限界が来たとか、パフォーマンスが低下したというのもないんですけど、こういうキャラクターなんで」と特別な引退理由がないことを明かすも、記者から復帰の可能性を聞かれた際には「ないです」とはっきり言い切った。

今シーズンは平均19.6分間の出場で7.3得点、2.5アシスト、1.7リバウンドを記録し、シックスマンとして栃木の優勝に貢献した。パナソニックからの7年間で330試合出場という数字を残し、渡邊のバスケ人生は幕を下ろした。

会見中には多くのファンから「やめないでほしい」や「ありがとう」という様々なメッセージが届いた。

「やめたいと思ったことがないから楽しいんでしょうね。20年バスケットやって、2年ラジオやっただけですからね」

「社長が泣いたのに俺が泣かなくてすいませんでした」と最後まで渡邊らしさを見せた。次なるステージでの活躍を期待したい。