薮未奈海

「今も自分がここにいるのはみんなが認めてくれているから」

「信頼しているからこそ休みの期間を置く」

代表活動の中でこんな言葉をかけられたなら、多くの選手は少し安心するかもしれない。だが、薮未奈海は違った。

ベルリン(ドイツ)で開催される『FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026』まで残り2カ月強。コーリー・ゲインズ体制の女子日本代表は『競争』をキーワードにしながらチーム作りを進めている。そして薮は、その競争のど真ん中にいる選手だ。

女子日本代表は5月にラトビアとの国際強化試合を行ったが、アメリカトレーニングキャンプに参加した数名の選手は不参加となり、薮もその1人だった。アメリカ以来の代表活動となる第2次強化合宿に参加した彼女は「事前に、『信頼しているからこそ休みの期間を置く』と仰っていただいた」と明かしたが、「固定された枠ではないと思います」とも言い、代表安泰とは考えていない。

「ラトビア戦を見ていても、自分のポジションに新しい選手も増えて争いになってきています。(ゲインズヘッドコーチが)固定することは絶対にないので、アグレッシブにチャレンジャーの気持ちでやるだけです」

『FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026予選トーナメント』は5試合に出場し平均7.4分のプレータイムで0.6得点、3ポイントシュート成功率25.0%と結果を出せなかった。それでも、指揮官は大事な場面で薮を起用するなど、彼女への信頼が見て取れた。藪も言う。

「予選の時はコンディションの問題があって、プレータイムが制限されたりすごく難しかったです。自分のやりたいことがなかなかできなかったり、ちょっと下がっていた時期でした。それでもみんなからの声掛けだったり、コーリーからの言葉で『自分はできる』と自信を持つように心がけましたし、信頼されているのはすごく感じました。今も自分がここにいるのはみんなが認めてくれているからで、自信を持って自分のプレーをしたいと思います」

自信を取り戻した薮は、Wリーグファイナル第4戦で14得点2ブロックと奮闘し、デンソーアイリスの初優勝に大きく貢献。最高の形でシーズンを終えたことで、心身ともに充実しているという。「ワールドカップ予選からなかなか上がってこない中、最後にああやって締めくくれてホッとしました。何も残せないまま合宿に来ていたら『うーん、何だろう?』ってなっていたと思います。そういった部分で吹っ切れたというか、切り替えられるきっかけになったので大きかったですね。今はコンディションもバッチリです」

薮の強みは3ポイントシュートの精度で、本人も「シューターなのでシュートを打つことが役割」と言う。当然ながらシューターは相手に最も警戒される存在で、シュートを簡単に打つことはできない。だからこそ藪はシュートを打つ前後の動きに磨きをかけるなど、自身のレベルアップに努めている。

「自分の幅を広げる意味でも、シュートが打てなかった後の足の動きなどをオフにやってきました。合宿ではキキ(林咲希)さんのシューティングを見て、『こういう練習があるんだ』と思いましたし、得られるところがたくさんあります。アメリカ遠征でWNBAのトップ選手たちと対峙した時は、動きを読まれて一つのステップだけでジャンプシュートを打たれたことがありました。1対1の無駄のない動きなど洗礼を受けたなって思いましたし、ワールドカップに向けて自分がどうやっていきたいかを探っています」

個々の成長がなければ、ワールドカップで上位進出を果たすことは難しい。それはワールドカップ予選で苦戦を強いられたことを見ても明らかだ。薮も「まだ突き詰められていないという共通認識がみんなにあります」と言うが、それは伸びしろがあることの証明でもある。オーストラリア遠征も含めた今後の2カ月間で、チームと個の成長が加速すれば目標は自然と高まっていく。