
ポテンシャルのディバンツァ、確実性のピーターソン
現地6月23日に行われるNBAドラフトで最大の焦点は、ウィザーズが持つ全体1位指名権の行方だ。ブリガムヤング大のAJ・ディバンツァが長らく最有力とされてきたが、ドラフト直前になってカンザス大のダリン・ピーターソンへの評価が急浮上し、ウィザーズは土壇場まで決断を保留している。
ウィザーズが全体1位指名権を得たのは2010年以来16年ぶり。前回はジョン・ウォールが『チームの顔』となり、2012年の1巡目3位指名のブラッドリー・ビールとともに一時代を築いた。しかし、このコンビの時代が終わるとチームは低迷期に入る。再建は遅々として進まず、今シーズンは17勝64敗。サンダーやスパーズが再建を終えて飛躍し、自分たちが育てた八村塁やデニ・アブディヤが移籍先で活躍するのを横目に、3年連続で64敗以上を喫している。若いタレントは揃っているが『負けることに慣れてしまう』状況で、この全体1位指名権を活用して低迷脱出のきっかけを作らなければならない。
ウィル・ドーキンスGMは「優先事項はただ一つ、運をつかみ取ることだ」と話す。今年のNBAドラフトは『豊作の年』と言われ、ポテンシャルが拮抗するタレントが上位候補に並んでいるが、ここで選択を誤るわけにはいかない。
ディバンツァは『豊作の年』の中でも身体能力で他を頭一つ上回り、どこからでも得点を奪える万能性を持つフォワードで、今後長きに渡ってエースを張ることが期待できるタレントだ。ポイントガードにトレイ・ヤング、インサイドにアンソニー・デイビスとアレックス・サーというスター選手がいるウィザーズにとって、『ウイングの核』になるディバンツァの指名は理にかなっている。
一方、カンザス大のピーターソンは、高いシュート力を持つコンボガードで、ジャンプシュートの精度を生かしてルーキーイヤーから主力としての活躍が期待できる。ディバンツァにない要素を持つことで、ピーターソンの評価がドラフト直前で上がっている。
身体能力とスター性のあるディバンツァがポテンシャルで上回るのは確かだが、弱点がないわけではない。ジャンプシュートの精度はそれほど高くなく、プレー強度の上がるNBAで良い確率を残すには、かなりの成長が必要だ。またディフェンスで手を抜かず頑張るタイプではあるが、NBAのチームディフェンスをこなす戦術理解には懸念がある。また、ヤングがハンドラーとしてボールを持てばディバンツァはオンボールで攻める機会が減り、強みを発揮できなくなる。ディバンツァのドライブ主体でオフェンスを構築するとなれば、デイビスとサーはペイントを空ける仕事を求められ、ここでも強みが削がれてしまう。
そうであれば、ポテンシャルよりも確実性を優先して、即戦力のシューターとして計算できるピーターソンへの方針転換は考えられる。ヤングがハンドラーを担い、ピーターソンはフロアを広げ、デイビスのキックアウトからキャッチ&シュートを狙う。デイビスとサーの2人が、あるいはどちらか1人が常にコートにいれば、オフェンスリバウンドの強みも生かせる。
エースになれる逸材であるディバンツァの指名を回避し、ヤングやデイビスといったベテランを優先するのは馬鹿げた判断に見えるかもしれない。しかし、ロッタリーの仕組みが変更され、またボトム3に入る失態は絶対に避けなければいけないという事情もある。ヤングは27歳で、このタイミングで結んだ長期契約を全うできる年齢だ。33歳のデイビスはそうはいかないが、その間にサーが経験を積める。
そう考えると、ドラフト当日のトレードもあり得る。2位指名権を持つジャズと順位を入れ替え、最も評価の高いディバンツァをあえてジャズに譲ってピーターソンを確保しつつ、将来の指名権を得るという動きも取れるはずだ。全体1位指名権の価値が高いからこそ、その活用の仕方は多岐にわたる。なおかつ絶対に失敗できないというプレッシャーもある。NBAドラフトのその瞬間まで、ウィザーズは自分たちにとって何がベストかを探り続けることになりそうだ。