即席チームで強固な一体感を築き上げる手腕を持つ

マーベリックスは『変化の時』を迎えている。新たな球団社長に就任したマサイ・ウジリは「リセットして勝ちに行く」と宣言し、契約を4年残していたジェイソン・キッドを解任して、ミシガン大をNCAAトーナメント優勝に導いたダスティ・メイを新たなヘッドコーチに据えた。

ウジリはラプターズの球団社長として、ニック・ナース、ダーコ・ラジャコビッチとNBAのヘッドコーチ経験を持たない指導者を抜擢しており、今回もそれを踏襲した形となる。メイは2018年からフロリダ・アトランティック大を率いて、2023年にはNCAAトーナメントのファイナル4に進出。ミシガン大のヘッドコーチになって2年目で全米制覇を成し遂げ、NBAのヘッドコーチへと転身する。

ミシガン大での優勝は、高校生のリクルートではなくすでに大学で実績のある即戦力を集める方法で成し遂げられた。巨額の資金を投じてタレントを集めるやり方は『傭兵』と批判されることもあったが、即席チームで強固な一体感を築き上げるという点で、メイの手腕は評価される。

ミシガン大は資金力で選手を集めたが、その際にはバスケの能力だけでなく人間性もシビアに評価して、チームを優先できない選手は獲得しなかった。そしてシーズン前からオンコートだけでなくオフコートでも選手同士を密に過ごさせ、プレースタイルだけでなく人間性まで相互理解を進めることでケミストリーを作り出した。

今年のNCAAトーナメントに臨む際のインタビューで、彼はミシガン大を「毎日お互いを思いやり、弱さをさらけ出す。エゴをすてて全力でプレーし、お互いに刺激し合い、責任を追及し合って成長していくチーム」と表現している。

NBAでは30番目のチームにも世界最高のタレントが集まっており、指揮官はその才能をチームとしてまとめ、引き上げていくことが求められる。NBAでの指導歴はなくとも、メイのその才能は証明済みだ。ルカ・ドンチッチの放出でガタガタになったマブスだが、今後10年を託せる新鋭としてクーパー・フラッグを擁しており、文字通りの『再建』がこれからスタートする。

メイはこれまでとは桁違いのプレッシャーを受けることになるが、「我々は期待や重圧によって働かされるのではない。ただ『ベストを尽くす』ことを意識し、そのことを楽しむ」という彼のポリシーを貫くことができれば、問題にはならないはずだ。

メイは「今の自分がどれだけ幸せか、誰も信じてくれないだろう。私の夢はインディアナ州南部のそれなりに強い高校の監督だった」と語っている。殿堂入りコーチのボブ・ナイトが率いるインディアナ大の学生マネージャーから始まった彼のキャリアは、大学バスケでNCAAトーナメント優勝という花を咲かせ、NBAに至った。

マブスとしては、このタイミングでメイの採用を決めたことで、NBAドラフトを始めとするチーム作りの検討にヘッドコーチの意思を絡められるようになった。まずは9位と30位、48位の指名権を持つNBAドラフトでマブスがどう動くかに注目だ。