金澤杏

東京医療保健大で先発起用、昨年の分を取り戻す勢いで

東京医療保健大には、後藤音羽、ロー・ジョバ、深津唯生など世代を代表するタレントが揃い、恩塚亨ヘッドコーチは彼女たちに「技術、戦術、マインドセットもあらゆる角度から高めて、世界で活躍する選手になれるように。大学で成果を出すことでそれを一緒に身につけられるようサポートしたい」という考え方で向き合っている。

ただ、タレントが揃っていれば勝てるほどバスケは甘くない。昨年は勝ちまくった一年となったが、今年は春のトーナメントでは決勝で白鷗大に敗れて準優勝。新人戦では準決勝でダークホースの立教大に敗れた。

新人戦は目標が優勝だっただけに、準決勝で敗れたショックは大きかったが、「悔しさはこのコートでしか晴らせない。支えてくださる方々に自分たちの生きざまを見せるようなつもりで、力を出しきろう」という恩塚コーチの言葉に選手たちは気持ちを入れ直し、最終日に山梨学院大に完勝して3位で大会を終えた。

その東京医療保健大で、1年生ながら先発に抜擢されて活躍しているのが金澤杏だ。桜花学園では3年生の春に右膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、インターハイ優勝はベンチから見守るしかなく、ウインターカップも初戦の数分間コートに立つのがやっと。ようやくケガが癒えた今、昨年の分を取り戻す勢いでコートを駆け回っている。

「立教大との試合では自分たちの準備してきたバスケが全くできず、相手の3ポイントシュートにアジャストできないまま負ける悔しい結果になりました。優勝しか見ていなかったので複雑な気持ちでしたが、ここで終われない、次の新人インカレに繋がる試合をしようと声を掛け合って、自分たちのバスケができたのは良かったです」

そう語る金澤の右膝にはまだテーピングが残るが、プレーに支障はないとのこと。持ち前のオールラウンドなプレーは見られないが、ブランクがある上に大学に入ってまだ3カ月では無理もない。エースの後藤やインサイドで強みを見せるジョバや深津に良い形でボールを入れることを意識し、シューターの役割に徹している。

3年生の絈野夏海が不在となる新人戦では、3ポイントシュートでチームを引っ張るのは金澤の役目。立教大との試合ではチームの3ポイントシュートが25本中2本しか決まらず、金澤以外の選手は21本打って成功なしだった。金澤は「確率は良くなくても全員がシュートを打ちきろう」と、打つマインドを立て直す声掛けをして、山梨学院戦では金澤と後藤が4本、チームで12本成功と3ポイントシュート攻勢で粘る相手を振り切った。

金澤杏

「大学生のうちに日本代表に絡める選手になりたい」

去年をケガで棒に振ったとはいえ、金澤にはWリーグや海外にチャレンジできる可能性もあった。それでも金澤が東京医療保健大を選んだのは、恩塚コーチの存在があったからだ。

「私の将来の目標はオリンピックに出場することです。ずっと日本代表のコーチを務めてきた恩塚さんの下でプレーすることが自分の夢に一番近付けると思いました」と金澤は自分の選択を説明する。「ケガがあって身体作りが一番大切だとあらためて思うようになって、入学してからもフィジカルの部分だったり、ケガをしてマイナスになった部分をプラスに変えていけている感覚があります」

エースの後藤をはじめ周囲を引き立てる役割についても、受け入れてはいるがそこに甘んじるつもりはない。恩塚コーチが目指すのは、相手とのやり合いや疲労、プレッシャーがあるカオスな状況でも自分たちの強みをしっかり出せる、その判断を重視するバスケだ。先輩に遠慮してばかりだったトーナメントから今回の新人戦では改善が見られ、周囲の持ち味を引き出しながら自分らしさももっと出していけると手応えは得られている。

「トーナメントの反省は、後藤さんに頼りすぎてしまって自分のシュートチャンスを見逃してしまうことでした。今回は自分のチャンスが増えてはいるんですけど、3ポイントシュートだけじゃなくもっとアグレッシブにプレーできるのが自分の持ち味なので、ここからの試合で自分らしさをもっと良い形で出して、ケガする前よりも自分の強みを出していきたいです」

今の金澤にとっては、1学年上の後藤は頼れる先輩であり、追いかけるべき存在だ。「高校の時から上手だったんですけど、去年医療に行った時点でもう比べ物にならないぐらいプレーの質が上がり、プレーの幅も広くなっていて、上手い選手からすごい選手になったと思いました。後藤さんと一緒にプレーすることで自分のプレーの幅も広がる感覚が楽しいですし、先月の代表活動にも招集されていてリスペクトしています」

始まったばかりの大学生活は、実戦のリズムを取り戻すところからのスタートではあるが、ここまでは順調に来ている。だが、金澤の目標は高く、そこに向けてさらにスピードを上げていくつもりだ。

「大学生のうちに日本代表に絡める選手になりたいですし、医療を卒業する頃には代表を引っ張るような選手になりたいです。プレーの部分はもちろんですし、恩塚さんからは人間性の部分を褒めていただいているので、自分がコートにいることでメンバー全員が楽しくバスケができる、そんな影響力を出せる選手になりたいです」