太田敦也

8番は八村塁に譲る「番号とかはどうでもいいんです」

今回の代表合宿から、バスケットボール日本代表における太田敦也の背番号は8から4に変わっている。35歳でチーム最年長、長らく代表を支えてきた太田にとって、「高校で初めて代表に選ばれた頃から」という愛着ある番号だったが、今回の代表活動が始まる前に八村から「譲ってほしい」との相談を受けると快諾した。

これについて「僕がつけていてもね」と太田は笑う。「NBAドラフトで選ばれて、ウィザーズでも8番を着けることになって、これから塁を印象づける意味でも代表で8番を着けることは大事だと思います。だから『どうぞどうぞ』という感じです」

「塁にとってはここからが本当のスタートで、努力して結果を出していかないといけないです。すごく頑張ってほしいし、代表の中で何かあいつのために手伝えることがあるならやりますよ。手伝う、っていう上から目線じゃないですけど、何かやってあげられたらと思います」

所属する三遠ネオフェニックスでもそうであるように、また代表での長いキャリアを通してもずっと、太田は『縁の下の力持ち』に徹してチームを支えてきた。代表での自身のプレーについても、「ニック(ファジーカス)と塁がメインになるので、僕は彼らをうまく休ませられるよう、いつものように身体を張ってディフェンスとリバウンドで頑張りたい」と主役を立てる。

実績豊富な大ベテランだが偉ぶるところは一切なく、チームのためであれば自己犠牲を厭わない。それでも、彼にも譲れないラインはある。

「番号とかはどうでもいいんですよ。着けたい、着けなきゃいけない人が着ければいいので僕は気にしません。でも、バスケットのこと、コート内のことで引かない部分では一歩も引くつもりはないです。例えば12人の登録枠は僕自身が取りに行っているものです。それはすべての選手が実力で取っていくべきもので、僕自身も与えられるものだとは思っていないし、そこはフォア・ザ・チームとか優しさとはかけ離れたものです。うまく言葉が見つからないけど、見つかったとしても不適切で書けない言葉になりそうです(笑)」

太田敦也

「全員がベストなパフォーマンスをする中で選ばれたい」

太田にとってメディア対応で言葉を発するのは「コート外のこと」なのだろう。だが、「コート内のこと」にフォーカスしてもらうと、力強い本音の言葉が返ってくる。ニックや塁を休ませるために、というのは言葉のアヤだ。

「もちろん、本当は試合に出たい、プレータイムは長いほうがいいです」と太田は言う。「僕がスタートで出るとなったら、もちろんそれはうれしいです。これからの合宿の成果として、そういう評価を得られたということなので。そうなったらそうなったで、やるべきことをします。ぶつかって砕けていくだけです僕は」

「チームに残りたい、その中でプレータイムを取りたいなら、練習の中で結果を出さないといけない。それはニックや塁だけじゃなく、若い選手も含めて同じです。全員がケガのない中で全力でベストなパフォーマンスをして、その戦いの中で自分が選ばれたい、勝ち取りたいという気持ちはしっかり持っています。でも、それよりも僕は勝ちたいんです。代表の場合は特に結果がすべてなので、僕なりに自分の役目はこういうものかなと考えています」

日々の練習から激しくプレーすることで、太田は自分を盛り上げ、チームも盛り上げようとしている。「ここに来たら年齢は関係ないですから。中学生や高校生は声を出すのが大事と言われますけど、それは僕も同じで練習から声を出していこうと思っています」

しっかりと身体を作り、フリオ・ラマスのバスケットを理解して、チーム内で健全な競争を重ねる中で日本代表を仕上げていく。その成果は間もなく行われる国際親善試合で確認できるはず。太田は言う。「僕はあまり目立たないかもしれないですけど、その中でも一瞬でも気を抜かないでプレーしていると思うので、そういう姿を見てもっと僕を応援してほしいですし、日本代表の勝利のために応援してほしいと思います。是非、試合会場に来るなりテレビで見るなりして、僕たち日本代表を応援してください」

日本バスケ界にとって暑い夏がやって来た。太田も胸の内に熱い気持ちを持って、日々の練習に取り組んでいる。