長崎ヴェルカは2025-26シーズンのBリーグレギュラーシーズンで西地区優勝、全体首位でチャンピオンシップに進み、見事初優勝を飾った。B3リーグから参戦し、たったの5年間でここまで上り詰めることができたのは選手やコーチの力だけではなく、チームスタッフ、フロントの絶え間ない努力の成果である。このチームをまとめるのは社長兼ゼネラルマネージャー(GM)の伊藤拓摩だが、彼の下には『Bリーグドラフト2026』で他クラブが思いつかなかった方法を用いて、選手の育成目線から選手獲得実現に結びつける手助けをしたアシスタントGMがいる。その人物こそ、磯野眞だ。その彼にアシスタントGMの仕事内容、そしてやり甲斐について語ってもらった。(取材日=4月24日)

キャリアを転換するきっかけとなった面談

──これまでの経歴を教えてください。

東京大学を卒業した後に、コーチングの勉強をしたいと考えてアメリカの大学院に留学しました。大学院に通いながら、高校のコーチをしたり、大学のマネージャーやビデオコーディネーターを兼務する生活を送っていました。将来を考えた時にアメリカで仕事を続けるのはビザの問題もあって難しかったため、地元の茨城に帰省したタイミングで茨城ロボッツの関係者に繋がることができ、地元でコーチをやることに魅力を感じ、アシスタントコーチとしてロボッツに加入させてもらいました。

その後、長崎ヴェルカにアナライジングコーチとして招き入れてもらい、昨シーズンから現場を離れてマネジメント業務をメインで行うようになりました。今年からは、現在の役職となって編成にも携わるようになっています。

──長崎に移籍したきっかけについても教えてください。

茨城在任中、伊藤GMが長崎ヴェルカの構想を対外的に出していたタイミングで、お声がけをいただきました。伊藤GMとは僕が東大で学生コーチをしていた時からの付き合いで、アメリカ留学をしていた時にテキサスのご自宅に遊びに行かせてもらったり、どのような選手が良いと思うか、というような話をする仲でもありました。

当時は茨城もB1昇格を目指して戦っていて、B1に上がってやってみたいという気持ちもあったのですが、長崎のビジョンに共感した部分と僕自身が成長できる環境だと思って移籍を決めました。茨城もその後、昇格を決められたので良い区切りになりました。

──とても長い付き合いですね。

拓摩さんがトヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)でアシスタントコーチをしていた時に、ヘッドコーチのドナルド・ベックコーチが定期的に『トヨタバスケットボールアカデミー』という指導者向けのクリニックを実施していました。そこに参加した時に、知り合いを通じて拓摩さんと話をする機会を得たのですが彼が東大のバスケに興味を持ってくれてたので、不躾ながらクリニックの依頼をさせていただいたら二つ返事でOKをしていただきました。その時からの付き合いですね。

ちなみに、そのときインターンとしてアルバルクのサポートスタッフを務めていたのが長崎の前ヘッドコーチの前田健滋朗コーチです(2025-26シーズンは滋賀レイクスで指揮)。まさかその時にインターンをしていた方と一緒に仕事をするとは思いませんでした(笑)。

──あらためて、コーチからGM業に切り替えた理由について教えてください。

茨城の当時の副社長と面談した時に、今後のキャリアについて話し合いました。「ヘッドコーチとしてチームを統括して変えていく立場になりたい」という話をした時に「あなたの適正や考えていることはコーチというよりもむしろGMではないのか。チームカルチャーを作って大きく影響を及ぼし、中長期的に勝つチームを作ることはGMだからこそできる仕事だよ」と、すごく実感を伴う指摘をいただきました。

茨城に在籍した2年間はヘッドコーチが1年目と2年目で異なったのですが、GMが良い仕事をしてくれたおかげで勝つことができて、GMという存在の重要性を実感することができたのも大きな要因でした。

──その思いもあって、シフトチェンジしたのですね。

そうですね。長崎での3年目が終わった時に、ヘッドコーチが変わるタイミングを迎えました。その時に「現場を離れて、マネジメント側に行きたいです」と要望を伝えました。

チームを中長期的に勝てるチームにしていく

──アシスタントGMという仕事は具体的にどのような仕事ですか?

これは正直言うと、定義がすごく難しい仕事だと思っているのですが、大きい話で言うと『チームを中長期的に勝てるチームにしていくための活動』というイメージですね。その中で編成業務が大きなウエートを占めていて、選手やスタッフの獲得、既存選手の契約延長に向けた交渉、書類作成と申請、リーグとのやり取りと、多岐に渡ります。現場のコーチはシーズンを通してチームを強化し、次のゲームで勝てるように全力を注ぐ立場であるのに対して、GMはどちらかというと、長い目で見てチームが勝てるように最大限の環境を整備していくというイメージです。そしてGMが最終決定をする上で必要な判断材料をより正確により早く集め、その意思決定をしやすく様々な方向から調整して補完する役割がアシスタントGMの務めとなります。

──アシスタントGMで大変なのはどのような業務ですか?

思ったよりもいろいろな仕事と関わりがあるので、嫌味な言い方ではないですが『マジで何でもできるな』と(笑)。例えば編成なら予算を与えられ、選手、スタッフを揃えて「このぐらいの価値を目指します」といった社長、オーナーとの交渉もありますし、スタッフからの「ここが上手くいってないのでどうしたら良いか」という日常の相談に対応したり、様々なレイヤーの話に俯瞰しながらも細部まで目を行き届かせる必要があります。

──選手の問題はコーチをしていた経験から解決策もわかると思いますが、スタッフの問題は専門性が高いと思います。どのように解決していくのでしょうか?

ウチのクラブは組織の仕組みが他クラブと大きく異なっていて、それぞれの専門の領域に対してディレクター職を置いています。その人たちが各部門の問題を吸い上げて解決に向かっていきます。

例えばトレーナー、ストレングスコーチの部門で言うと『ディレクター・オブ・スポーツパフォーマンス』という役職がそれを担います。アシスタントGMは専門性に関わることは少なく、ジェネラルな話に登場するイメージですね。<後編へ続く>