「一つのピースにやっとなれたと実感しています」
オープンハウスアリーナ太田に雷が落ちた。そう思うほど、今シーズン一番の大歓声が響き渡った。その瞬間を、チームメートもファンも、そして本人も待ち望んでいた。
4月11日に開催された群馬クレインサンダーズvs川崎ブレイブサンダースの第1戦。最終クォーター残り26秒。藤井祐眞のパスに合わせて佐藤誠人は宙を舞い、ボールをリングに叩き込んだ。「耳が聞こえなくなるくらいの大歓声」と佐藤自身も振り返るように、アリウープダンク成功にアリーナは熱狂に包まれた。
今節を迎えるまで、佐藤は19試合に出場して無得点。出場機会を勝ち取れず、個人としては苦しいシーズンを送っていた。しかし、このアリウープの前のポゼッションで、ゴール下のジャンプシュートを沈めてB1初得点を記録した。
「相手がギャンブル気味なディフェンスをしてきたので、カッティングでゴール下に行けると自分の中で見えていました。ゴール下に行けば祐眞さんから絶対にパスが来ると思っていました」
佐藤はこの1本目のシュートでもアリウープを狙っていたと明かす。「『アリウープパスを出して欲しい』と手を挙げましたが、とっさの判断だったので上にはパスが来なかったです。2本目は完全に祐眞さんと目が合ったので『来るな』と思って跳びました」
『趣味:ダンク』と公言する日本人屈指のダンカー。その一撃には、積み重ねてきた思いが詰まっていた。
「普段から応援していただいている気持ちに応えられたのがうれしかったです。チームメートがすごく支えてくれて、このままじゃダメだな、引っ張られてるようじゃダメだなと思って……。あせりはありましたが、一生懸命に追いついて、今日は結果が出せました」
「厳しい挑戦になると覚悟を持って飛び込んだB1だったので、こういう形で結果が出たことがすごくうれしいです。ここから残りの試合は、僕も含めた12人全員で戦っていかなければいけないので、その一つのピースにやっとなれたと実感しています」

初挑戦のB1で感じたギャップ
昨シーズンまでの5シーズンはB3クラブに所属し、今シーズンから群馬でB1に挑戦している佐藤。そこには大きな壁があったと語る。「最初はワクワク感にあふれていましたが、今まで自分がいた環境とのギャップについていけなくて、もがき苦しんでいました」
まず感じたのはスピードの差だった。「物理的なスピードもですが、状況判断のスピードが全然違う。トレイ(・ジョーンズ)とマッチアップしてると『いつの間にか置いていかれた……』となりますし、祐眞さんについていても『そっちが空いてたか?』みたいな」
それはB3の試合でも練習でもほとんど経験したことがなかったと続ける。「たまにそういう選手を見て『上手だな』と思うくらいでした。でも、ここではそれを全員が当たり前にやってくる」
なかなか出場機会が得られなかった要因がもう1つあった。「自分のプレースタイルをいかにチームのスタイルにすり合わせられるかという難しさはシーズンを通して感じていました」
B3時代は、チームルールも多くなく自分のストロングポイントを存分に発揮することが求められた。しかし、群馬ではチームのシステムの中で、役割を遂行することが求められる。佐藤は難しさを感じつつも成長できる実感を得ている。
「今まで経験したことのないバスケなので楽しいです。ここまでルールが確立されたバスケは、初めてなので学びが多い。ミスしながらですが、ここまで積み重ねてきました」
「やるべきことを100%やっていたと自分でも言い切れます。メンタルの浮き沈みがあっても、プロである以上、バスケットを好きである以上、やらないという選択肢は僕の中にはありませんでした」と困難な状況の中でも佐藤は前を向き、準備を続けていた。「試合に出ていなくてもワークアウトやコンディショニングは欠かさずやっていました」

「孤独を感じていた時もありましたが、一人じゃないと実感しました」
その積み重ねが20試合目にして、実を結んだ。2本のシュートで会場を湧かせ、ヒーローインタビューにも選出。チームメートの喜びように佐藤が愛されていることがよく分かった。
チームメートからどんな言葉をかけられたかと聞くと「あまり覚えてないですね(笑)」。心の昂りは自身が想像していた以上だった。「ロッカルームに戻った時に感情が爆発しちゃって、チームメートの前で泣いちゃいました。みんなが温かい言葉をかけてくれて、孤独を感じていた時もありましたが、一人じゃないと実感しました」
さらに初得点を挙げてから一晩が経ち、改めてチームメートをはじめ支えてくれた人への感謝が込み上げたと言う。「(テレンス・)ウッドベリーやケニー・ローソン・ジュニア、あとジャスティン(・ハーパー)さんが早く点を決められるようにと僕にボールを回してくれていたのを思い出して、たくさんの人に感謝しなきゃいけないと。コートに立てることも点を決めることも当たり前じゃないとすごく感じました」
B1初得点は一つの区切りにはなったが、終着点ではない。自身の力を証明するためにキャリアは続いていく。佐藤は次のようなプレーでチームに貢献していきたいと意気込む。
「身体能力を生かしたプレーを出していきたいですし、リズムチェンジをできるコー(・フリッピン)さんのような役割を僕が担えたらと。ガードに対して嫌な距離でピタッと守り続けられるディフェンスもやっていきたいです」
群馬は今節も勝利し、破竹の12連勝。成績を36勝16敗とし、東地区2位に浮上した。まだまだ混戦が続く状況だが、チャンピオンシップ初戦をホーム開催できる位置にいる。
「強豪との対戦も残っているので、何が起こるか分からないです。連勝していますが、悪い時も来ると思うので、周りを前に向かせられるようなポジティブな言葉をかけていきたいです。自分が出た時にはやるべきことを100%遂行できるようにして、まずはホーム開催を叶えます」
チームとしてもチャンピオンシップ進出と、その先の優勝を掲げて臨んでいるシーズン。佐藤にも特別な思いがある。「僕はまだ人生で優勝を一度も経験していないので、ここで優勝をして今までの軌跡に花を咲かせれたらいいな」
積み上げてきた時間が、ようやくコートで報われた。佐藤にとって大きな一歩は、好調なチームの士気をさらに上げる。これをきっかけに群馬と佐藤のさらなる躍進に期待したい。
佐藤誠人のアリウープダンクで会場は大盛り上がり🔥
群馬が11連勝で東地区2位に浮上!@MKT_Basket @gunmacrane3ders📡バスケットLIVEで見逃し視聴https://t.co/7Wsw40m92O#Bリーグ #りそなグループ pic.twitter.com/yLvRoub3uh
— B.LEAGUE(Bリーグ) (@B_LEAGUE) April 11, 2026
