文=鈴木健一郎 写真=小永吉陽子

相手のエースを止められず、リバウンドで劣勢に陥る

長野県で行われている東アジア選手権、グループAを首位通過した日本は準決勝でチャイニーズ・タイペイと対戦した

立ち上がり、チャイニーズ・タイペイの帰化選手、クインシー・デイビスがエースの働きを見せる。太田敦也とアイラ・ブラウンが待ち構えるインサイドに力強く切り込んで得点。フィジカルに当たってもシュートの精度が落ちず、ペイントエリアから追い出してもミドルジャンパーを正確に決めてくるデイビスに日本は苦しめられた。

もっとも、日本も立ち上がりは良いペースで得点を重ねたのだが、第1クォーターの終盤にセカンドユニットに切り替えたところで得点が止まる。ここからオフェンスリバウンドを奪われてのセカンドチャンスポイントで引き離された。

チャイニーズ・タイペイはデイビスを試合開始から7分半引っ張り、この間に14得点とエースの働き。これで勢いに乗ったチャイニーズ・タイペイが第1クォーターで25-15と2桁のリードを奪った。

そして第2クォーター開始から、ほとんど休んでいないデイビスがコートに戻ってくる。今度はデイビスにディフェンスの注意を引き付け、他の選手がインサイドに切り込んで合わせる形でチャイニーズ・タイペイが得点を伸ばす。約4分間の出場でデイビスはサポート役に回り、これに日本は対応できずに点差を広げられた。

デイビスが再びベンチに下がった後、日本に時間帯がやって来る。富樫勇樹から永吉佑也へのピック&ロールがようやく形になり得点、比江島慎もスティールからの速攻を決めて21-32と点差を1桁に縮める。

それでもチャイニーズ・タイペイの守備は崩れない。ピック&ロールを試してもズレが作れず、またインサイドで押し負けてポストプレーができない。結果、外でボールを回すばかりでシュートの確率が上がらない。得点できない時間帯こそ守備で踏ん張るべきなのだが、立ち上がりから取られすぎたリバウンドを意識せざるを得ず、ボールを奪っても速い展開に持ち込めない。

前半を終わって26-40と大差がついた。最大の要因はオフェンスリバウンドで、日本の4本に対し相手は13本と、ここで大きな差が出てしまった。

比江島、橋本を中心に流れを呼び込んだ第3クォーター

ピック&ロールが対応されて崩すきっかけが作れない日本は、第3クォーター開始から比江島と田中大貴、自分でクリエイトできる2人を同時起用して打開を図る。ところがこれが噛み合う前にディフェンスで踏ん張ることができず、0-8のランを浴びて26-47と差は20点に広がる。しかも残り7分12秒の時点で足首を痛めた富樫がプレー続行不能に。後半開始早々、日本は厳しい状況に追い込まれた。

ところが日本はここから逆襲に転じる。富樫に代わった橋本竜馬が、闘志を前面に押し出したディフェンスで悪い流れを断ち切り、田中に代わって入った馬場雄大が攻撃に勢いを与える。残り3分を切ったところから、馬場の豪快なドライブレイアップ、再び馬場がドライブを仕掛けて今度は比江島への合わせ、そして橋本がハイプレスからオフェンスファウルを誘うと、アイラ・ブラウンがターンアラウンド・ジャンプショットを決めて41-53と詰め寄る。

慌てたチャイニーズ・タイペイは不用意なパスミスでターンオーバー。そしてファウルを得たアイラがフリースローの2本目を外すも、このリバウンドを馬場が拾って素早く展開。ボールを受けた比江島がドライブで切り込むと見せかけての急停止でディフェンスを引きはがし、ジャンプシュートを沈める。2点を返されるもすぐさま比江島が3ポイントシュートを決め返し、これで47-55。終盤に12-2の逆襲を見せ、8点差で最終クォーターへ。

勝負どころで守り切れず、比江島は「自滅」と悔やむ

逆転の予感にホワイトリングが大いに盛り上がる中、第4クォーターの序盤に橋本がフリースロー2本を決め、田中の崩しから永吉がジャンプシュートを沈めて51-56と5点差まで詰め寄る。しかし、日本の時間帯もそう長くは続かない。試合中盤から存在感をなくしていたデイビスにオフェンスリバウンドを奪われ得点を許し、そこから連続12失点で51-68と突き放される。

比江島と田中の同時起用は第3クォーターの猛攻を生んだが、比江島は足をつってプレーし続ける状況。アイラもプレーし続けて疲弊していた。またポイントガードが2人しかいない状況、富樫がケガをした後は橋本が一人で支える状況。それでもこの3人を引っ張り続けたが、2度目の『流れ』は来なかった。残り1分52秒、お手本のようなピック&ロールからデイビスにダンクを叩き込まれて63-76。ここから日本は最後の反撃に出て5点差まで追い上げたが、時間が足りず。ファウルゲームも実らず73-78で敗れた。

試合後、ヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチは、ポゼッションを相手に明け渡してしまったことが敗因だと語る。「集中を欠いた部分があった。それが相手の21オフェンスリバウンド、こちらの13ターンオーバーにつながり、ポゼッションを失ってしまった。良いディフェンスをしても、相手にセカンドチャンスポイントを与えてしまったのが痛かった」

29分という長時間の出場となり20得点を挙げた比江島も、負けて優勝がなくなった状況では満足感はない。「僕たちらしい激しさを出せず、自滅で負けてしまった」と語る。

オフェンスリバウンドを多数取られたのが敗因ではあるが、もう少し踏み込めば「問題が分かっていながら解決できず、ズルズルやられてしまった」ことだろう。オフェンスリバウンドは初戦の韓国戦でも課題だった。大会中、あるいは試合中にどうアジャストするか、その対応力が問われる。

こうして自国開催の大会で優勝する目標は果たせず、明日は3位決定戦に回ることになった。