「自分が積み重ねた努力は間違っていない」

バックスは4勝1敗とまずまずの開幕スタートを切ったものの、11月の7連敗で失速すると、今に至るまで大きな連勝がなく、勝率5割に遠く届かない状況にある。プレーイン出場の10位まで7.5ゲーム差の11位。残り12試合でこれを覆すのは事実上不可能だ。

それでも左膝を痛めたヤニス・アデトクンボは復帰して最後までプレーを続けるつもりで、休養を勧めるフロントと意見が噛み合わない。この噛み合わなさこそが、今シーズンのバックスを象徴している。

現地3月21日のサンズ戦では108-105と勝利。クラッチタイムを制しての勝利は久々で、2日前に若手ばかりのジャズに32点差で敗れた時には「競争心が全くなかった。先発メンバーのやる気のない姿勢が試合のトーンを決めてしまった」と選手たちを厳しく批判した指揮官ドック・リバースも、今回は「チーム一丸でつかんだ勝利だ。全員が貢献した」と選手たちを称えた。

もっとも、チーム状態は決して良くないし、指揮官リバースも「一つの勝ち負けに過剰に反応したくはない。チームが厳しい状況にあるのは間違いないし、勝敗よりも正しいプレーをしているかどうかがに注目したい」と語る。

この試合ではディフェンスとリバウンドでチームを支えていたボビー・ポーティスが脇腹のケガで欠場。アデトクンボ不在による得点力を補うべく、アキレス腱の痛みを抱えながら出場し続けていたカイル・クーズマも試合途中で退くことになった。

連敗中のサンズはここで1勝をもぎ取ろうと必死だったが、残ったメンバーで勝ちきれた要因は、チームで集中を保ち、良いディフェンスからオフェンスへと繋いだこと。その意味で2月に加入したウスマン・ジェンは、NBA屈指の勝負強さを持つデビン・ブッカーを抑える大仕事をやってのけた。

ジェンは言う。「ブッカーが偉大なスコアラーであることは分かっている。だから少しでも彼を自由にプレーさせないよう努めた。ジェイレン・グリーンがいない時は特にプレッシャーを厳しくして、ダブルチームも多用した。そういう積み重ねで、彼のリズムを狂わせることができた。今日はオフェンス面でベストの仕事ができたとは言えないけど、それでも守備で貢献することはできる。偉大な選手をマークするのは難しい仕事だけど、僕はそういう挑戦が大好きなんだ」

ジェンは2022年の1巡目11位指名選手で、サンダーで3年半を過ごしてトレードされた。1つ下の順位で指名されたジェイレン・ウィリアムズが昨シーズンの優勝の立役者となったのは対照的に、ガードの選手層が厚いサンダーで出場機会を増やせず、ルーキー契約を1年残してトレードされた。

常に強度の高いバスケをするサンダーから、その強度をどう保つかが課題のバックスへの移籍。「覚悟はしていた」と言うものの初めてのトレードでチームへの順応は簡単ではなかったはずで、ネッツでエースだったキャム・トーマスがいまだフィットに苦労している。それでもジェンは加入当初からサイズのあるオールラウンダーとしての能力を発揮してスタメンに定着。プレータイムはサンダーの10.9分から22.9分へと倍増した。

「このチームに来ることができて良かった。フロントもチームもみんな良い人ばかりで、助けてもらっている。良い活躍ができているのは、これまで積み重ねた練習の成果でもあるし、温かく迎え入れてくれたチームのおかげでもある」とジェンは言う。

「サンダーは層の厚いチームで、僕は思うような結果を残せなかった。でも、自分が積み重ねた努力は間違っていないし、今は毎試合でそのすべてを出し尽くそうとしている。これは僕にとって素晴らしいチャンスだ。コートに立つたびに、その機会を最大限に活用したいと思っている」

バックスの一員としてコンスタントに出場機会が得られる今の状況に大喜びしながらも、ジェンはサンダー時代の労働倫理を保ち続けている。朝は一番に来てシュートを打ち込み、練習終わりのワークアウトでも労を惜しまず、それが終わると夜のシューティングに付き合ってくれるスタッフを探す。「僕の自信の基盤は膨大な練習量だ」というジェンの姿勢は、シーズンの目標と自分たちへの自信を失っているバックスに良い刺激となっている。そして今の活躍は、今夏にフリーエージェントとなる彼に最善の未来をもたらすはずだ。