宇都宮ブレックス

「次の試合がすぐに控えている状況でエネルギーを無駄にできません」

宇都宮ブレックスは、Bリーグを制したロスターとコーチングスタッフがほぼそのままというチーム編成で今シーズンに挑んだ。2大エースの比江島慎、D.J・ニュービルを百戦錬磨のベテランたちが手堅くサポートし、高島紳司や小川敦也といった若手がステップアップするという理想的なサイクルの中で、EASLのグループリーグを首位で突破。終盤戦に突入したBリーグでも上位戦線に位置している。

このような結果を実現するために、チームは第三者には見えない場所で様々な工夫を重ねている。その最たる例が、EASL出場チームが軒並み苦労する過密スケジュール下でのロードマネジメントだ。

宇都宮は2023年にEASL Champions Weekに出場しているが、日環アリーナ栃木で2試合を戦ったのみ。シーズン中にホーム&アウェーで試合を実施するEASLの本流を経験するのは今回が初めてだ。週末にレギュラーシーズン、水曜にEASLを戦う以外の時間は、試合前後の移動、試合前日のスカウティング、そして試合翌日の休養でいっぱいになり、強度高く対人練習を行う、新しい戦術やラインナップを試す、修正が必要なプレーをていねいに再確認するといった時間はほぼ取れなかった。

そのような状況でもコンスタントに勝ち星を積み上げられている一因について、ジーコ・コロネルヘッドコーチはこう説明した。

「対戦相手を成長の足掛かりとして活用する必要があるんです。例えば、EASLで対戦したソウルSKナイツはアイス(ピック&ロールの守り方)に対してカバレッジを多用するチームで、本当ならチーム練習でそれを突破する方法を重点的に実践したいところなのですが、次の試合がすぐに控えている状況では練習でエネルギーを無駄にできません。ですからメンタル面の準備に練習の大部分を充て、フィジカルな応用はごく少なめにし、ここで学んだことを試合で『練習』していたという感じです。試合後に映像を見ながらフィードバックを行うことまでを含めたプロセスを常に繰り返し、プレーの引き出しや精度を少しずつ上げていければと考えていました」

スカウティングに取れる時間はたった1日。国際試合特有の試合環境やジャッジの違いに慣れるのも簡単ではない。オーバータイムの末に1ポゼッション差で敗れた台北富邦ブレーブス戦から楽な戦いはなかったが、シーズンを追うごとにチームは上記のプロセスから得たものを発揮していき、EASL FINALS MACAU 2026進出がかかったグループリーグ最終戦ではホームで富邦にリベンジを達成した。

「タフなスケジュールの中で、琉球、A東京とともにプレーオフに進出することができて本当に良かったです」と指揮官は言った。

小川敦也

小川敦也がEASLで得た国際経験「試合の入りの重要性を学んだ」

昨シーズンのチャンピオンシップ2024-25で素晴らしい活躍を見せた小川は、シーズン終了後に手術を実施し、12月のソウルSK戦からEASLに参戦した。

小川はアンダーカテゴリー日本代表としていくつかの国際大会を経験しているが、手術の影響で9月のFIBAインターコンチネンタルカップは不出場。さらにホーム&アウェー形式の国際試合も今回が初めてだった。独特な空気感、ジャッジの違いなど、さまざまなことを肌感覚で味わっている。

「ソウルSKは一人の強力な選手に他の選手が合わせるというバスケをやっていたんですが、Bリーグにはそういうチームがあまりないので新鮮でした。国際試合、特にアウェーゲームでは、一度相手に流れを渡すと一気に持っていかれるので、試合の入りが大切だということもEASLで得た大きな学びです。試合の最初から積極的にアタックしたり、強くプレーすることにチャレンジしていますし、その意識はBリーグの試合でも生きていると思います。」

前述したロードマネジメントにより、小川はチームで数少ないスクリメージを行い実戦に挑んだ。「試合を通して自分の感覚を高めていくのはすごく難しかったです」と小川は復帰当初を振り返ったが、リカバリー能力に優れ、何事もスポンジのように吸収する若い選手ならではの視点で、過密スケジュールの好影響について語った。

「EASLやBリーグ、さらに天皇杯と試合がたくさんあったことが、逆にコンディションを上げていくことに役立ちました。キツさもありましたけど、ここまですごく良い時間を過ごせています」

さらに小川は、興味深いことを口にした。それは宇都宮ブレックスというチームと、それを構成する選手たちがいかに成熟しているかを示すものだった。

「このチームの選手たちはみんなすごく連携が取れてますし、プレーで何かトラブルがあってもコミュニケーションですぐに解決できる力があります。練習に費やす時間ももちろん必要ですが、それをコミュニケーションで解決できる部分が多いのがブレックスの強みだと思います」

11月末と3月のバイウィーク期間中、宇都宮のコーチングスタッフたちは選手たちがしっかり身体を休めることを優先した活動スケジュールを組んだ。これ幸いとチーム練習を詰め込むという選択をしなかったのには、小川の語った力もおそらく作用しているだろう。

「こういう大会で優勝を狙えるチャンスは人生でそう何回も経験できるわけではないと思うので、一発勝負だからこその雰囲気や緊張感も味わいながら楽しみたいです。自分自身の調子もだいぶ上がってきていますし、僕が出ている時間帯はもっともっと速い展開を作り出せるように頑張りたいです」

小川はこのようにFINALSへの抱負を語った。

遠藤祐亮

天皇杯敗退を糧にEASL優勝へ、遠藤祐亮「一気にギアを上げる」

Bリーグ、EASL、天皇杯の3冠を目指して今シーズンに臨んだ宇都宮だったが、1つ目の冠となるはずだった天皇杯は準決勝で敗れ、獲得することができなかった。だからこそ、名誉だけでなく史上最高額となる優勝賞金150万ドル(約2億2500万円)という大きな『ご褒美』を得られるEASLを制し、最大の目標であるBリーグ連覇に弾みをつけたいと遠藤祐亮は言った。

「初戦のニュータイペイ・キングス戦に勝つことができたら次は琉球との戦いが待っています。一気に2段階くらいギアを上げないと優勝はできないと思っていますが、アウェーまで駆けつけてくれるファンの皆さん、各地で画面越しから応援してくれるファンの皆さんの思いに応えなければいけません。全員が同じ方向を向けば自分たちは戦っていけると思うので、しっかり優勝して、またレギュラーシーズンに戻れればと思います」

大一番が近づく中でも、宇都宮はシーズンを通して貫いてきたルーティンを崩すことはしない。グループリーグと同様、直前の滋賀レイクス戦の2試合をしっかり戦った後、決戦の地となるマカオへ飛び、アシスタントコーチが作成したスカウティングデータを擦り合わせていく。チームが培ってきた高い対応力は、短期決戦においても頼もしい力として発揮されるはずだ。